2011-09-01
■ [筆記][国文][評論][折々のうた][秋歌]秋のうた を読む(その25) 
49
玉津島(たまつしま)礒(いそ)の浦廻(うらみ)の真砂(まさご)にもにほひて行かな妹(いも)が触れけむ
柿本人麻呂集
『万葉集』巻九挽歌。紀伊の国で作った四首とある内の一首で愛人の死を悼む歌。「浦廻」は浦が湾曲した所。「にほふ」は色に染まる、美しく映える。玉津島のこまかい砂に、身も心染まって歩いていこう、在りし日のかの人が踏みしめていっただろう美しい砂よ。この歌一首だと、まるで生きている人への恋歌としか思えない。万葉の中の人麻呂歌集約三八〇首は、古代叙情詩の宝庫である。
大岡信『折々のうた』岩波新書
「「浦廻」は浦が湾曲した所。」ってラグーンかしら。
万葉の恋歌は、現代と感覚違いすぎて共感できるものの方が少ない。
50
うす霧の籬(まがき)の花の朝じめり秋は夕べと誰(たれ)かいひけん
藤原清輔(ふじわらのきよすけ)
『新古今集』巻四秋歌上。作者は平安末期の歌人・歌学者。『袋草紙』ほかの歌学書は殊に名高い。清少納言の『枕草子』第一段に、「秋は夕ぐれ。夕日のさして山の端いと近うなりたるに」云々とあるが、清輔は、いやいや、秋の面白味は夕暮だけとは限るまい、朝の垣根に咲く草花が、薄露にしっとりぬれているのをごらんなさい、と言う。物の新しい見方が、新しい情緒を生むことになるのだ。
大岡信『折々のうた』岩波新書
こんなイチャモンが通るから新古今は馬鹿にされるんです。もちろん、枕草子を完全暗記しているひとがいれば、爆笑ネタだったのでしょうがね。

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