蜀犬 日に吠ゆ

2011-09-07

[][][][][]秋のうた を読む(その31) 20:16 はてなブックマーク - 秋のうた を読む(その31) - 蜀犬 日に吠ゆ

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 肌寒(はだざむ)ミ一度は骨をほどく世に     荷兮

   傾城乳をかくす晨明(あけぼの)       昌圭(しょうけい)


 『芭蕉七部集』中『春の日』の「伊勢まゐり」の巻より。荷兮、昌圭ともに尾張の蕉門俳人。「骨をほどく」は死ぬ。「傾城」は美女が色香の魔力のため城(国)を傾ける、つまり一国の滅亡をも招くという意から、美女また遊女をいう。ここでは遊女。前句が人間だれでも一度は骨をほどく宿命にあることをいえば、付け句は肌寒い明け方に、寄り添いながら胸乳*1をかくす傾城の仕草を点じ、両々*2相まって凄艶(せいえん)の情緒を生んだ。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 僕の、『芭蕉七部集』の岩波文庫(ワイド版)はいったいどこにいったですかー!


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 揺れやまぬ樹樹(きぎ)の梢(こずえ)や揺るることその健康に叶(かな)えるならん

                      川浪磐根(かわなみいわね)


 『川浪磐根全歌集』(昭四五)所収。昭和四十四年八十六歳で去った佐賀出身の歌人。多年記者生活を送ったが、作歌意欲おさえがたく、五十歳をすぎて窪田空穂の門に入り、本格的歌よみとなる。神経痛、心臓病など多病に悩み、晩年は清貧の臥床(がしょう)生活に終始したが、精神は剛直だった。生涯歌は素人と覚悟して詠んだその作は、心境が澄んでいるための率直さとすこやかさ読者の心をうつ。右の歌、素朴な観察と見えるが、また深い洞察とユーモアを感じさせる。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 率直にいって、意味が分からない。木の枝が揺れている。それはわかる。「その健康に叶えるならん」がわからない。揺れているのは健康にかなっているからだ。 ?? 自然と戯れることができるのは健康だから、樹と風がお互いにいい感じだね! ってことでしょうか。

 だから、あんまりいい歌ではないように思えます。

折々のうた (岩波新書 黄版 113)

折々のうた (岩波新書 黄版 113)

*1:むなぢ

*2:読めない。もろもろ?