蜀犬 日に吠ゆ

2011-09-13

みなもと太郎『風雲児たち 幕末編』19 リイド社 20:36 はてなブックマーク - みなもと太郎『風雲児たち 幕末編』19 リイド社 - 蜀犬 日に吠ゆ

 幕末マンガの幕末編。

 安政の大獄決着。首魁吉田松陰斬首。

風雲児たち 幕末編 19 (SPコミックス)

風雲児たち 幕末編 19 (SPコミックス)

 桂小五郎が千住小塚原刑場で村田蔵六にであったときの脚注。

 「『歴史にifはない』なっどという出典不明な俗論に惑わされるべきではない。歴史は一瞬一瞬がifに満ちている」という国文学者・野口武彦氏の説(趣意)に私も同意しますね。

みなもと太郎『風雲児たち 幕末編』19 リイド社

 野口氏かあ……。

 わたしも、歴史が「偶然の産物」の積み重ねだとは思いますけれども、ifは未来の仮定を含みますからねえ。うかつに同時代人に同調することを避けてこその歴史家でしょうに。

 一瞬一瞬のifに思いをはせればSFですよ。みなもと先生。


 でも、この木戸孝允(桂小五郎)と大村益次郎(村田蔵六)の邂逅は本当になにか「Wheel of Fortune 運命の車輪」を思わせますよね。もちろん「時の河」的発想なら、ここで会わなくてもまたどこかで会う、のでしょうけれど。



 それで、みなもと先生、細かいことだとはおもうのですが、

 吉田松陰の辞世

第三章 今日(けふ)のおとずれ/何ときくらん

 身はたとひ

  武蔵(むさし)の野辺(のべ)に朽(く)ちぬとも

 留(と)め置(お)かまし大和魂(やまとだましい)


                     十月二十五日 二十一回猛士

みなもと太郎『風雲児たち 幕末編』19 リイド社

 音数からすると、「とどめおかまし」じゃないのかなあ、と思います。誰でも知ってたというから六音に典拠があるとは思いますけど。

西条真二『鬼の作左』メディアファクトリー 19:46 はてなブックマーク - 西条真二『鬼の作左』メディアファクトリー - 蜀犬 日に吠ゆ

 天下分け目の三方ヶ原! 敵の総大将はもちろん、甲斐の虎!

第八話 真に役立つ家来

 甲斐源氏

 十九代当主

 諱は晴信

西条真二『鬼の作左』メディアファクトリー
鬼の作左2 (MFコミックス フラッパーシリーズ)

鬼の作左2 (MFコミックス フラッパーシリーズ)

 さあ、盛り上がって参りました。

第八話 真に役立つ家来

 好きなものは

 釜ゆで――


 絶命寸前の人間の

 叫び声を聞く事を

 楽しみとしていた

西条真二『鬼の作左』メディアファクトリー

 西条信者が盛り上がるとき、一般読者はどんな気持ちなのでしょう。


 そして三方ヶ原で、打ち切り! 堂々の完結!

本多重次と人炒り釜

 

[][][][][]秋のうた を読む(その37) 19:21 はてなブックマーク - 秋のうた を読む(その37) - 蜀犬 日に吠ゆ

73

 鳥獣虫魚のことばきこゆる真夜(まよ)なれば青人草(あをひとくさ)と呼びてさびしき

                          前 登志夫(まえとしお)


 『縄文紀』(昭五二)所収。吉野生まれで今でもそこに暮らす歌人。身辺の風物を歌いつつ古代の時空を呼び戻そうとするのは、吉野の土地柄の自覚に立ってのことだろう。「青人草」は民草、蒼生と同じ意味で人民のこと。人がふえるのを草の繁茂にたとえた古代的形容。村の深夜、鳥獣虫魚語りかける言葉に耳を澄ましている時、そもそも人もまた「草」ではなかったかという思いにうたれたのだ。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 そして「さびしき」。さびしきがこの句の中心でしょう。鳥獣虫魚の言葉に比べて「青人草」の言葉の、風にそよいでざわざわしているだけの言葉の何と空虚なことでしょうか。

 うちは、真夜中になると近所の飲料水自動販売機の「ありがとうございました」がよく聞こえます。機械の言葉を耳にして、青人草はやがてさびしき。


74

 ぬばたまの夜(よ)の更けゆけば久木(ひさき)生(お)ふる清き川原に千鳥しば鳴く

                            山部赤人(やまべのあかひと)


 『万葉集』巻六。柿本人麻呂と並び称せられてきた万葉歌人。目も耳も深く澄んでいるのがその歌の特徴である。「ぬばたまの」は夜にかかる枕詞。「久木」はアカメガシワの木というが、別の説もある。吉野の宮滝近くに当時あった離宮への行幸に随行した赤人が、周辺の風物をたたえた歌である。同時作の「み吉野の象山(さきやま)の際(ま)の木末(こぬれ)にはここだもさわく鳥の声かも」もよく知られている名歌。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 吉野シリーズ。ぬばたまの夜なのに川の清らかさが分かってしまうあたりが赤人の耳の澄みようですかね。久木が久木とわかるってことは、川原まで降りたのかもしれませんがそれはあまりに危険ですから、風のうなり方で生えている木も特定できちゃうんでしょう。

 いや、「赤人」ってくらいだから赤外線モニタリングができるのかもしれません。判断保留。

折々のうた (岩波新書 黄版 113)

折々のうた (岩波新書 黄版 113)