蜀犬 日に吠ゆ

2011-10-26

[]左近司祥子編著『西洋哲学の10冊』岩波ジュニア新書 21:35 はてなブックマーク - 左近司祥子編著『西洋哲学の10冊』岩波ジュニア新書 - 蜀犬 日に吠ゆ

「自分の中で自分に出会う アウグスティヌス 告白」 中川純男

すべてのひとは真理を愛している

 アウグスティヌスはいいます――すべての人間が真理を求めている。「きみはだまされたいか」とたずねられて、「だまされたい」と答えるひとはひとりもいないことがその証拠である。しかしではなぜ、人間の世界は偽りに満ちているのか。ローマの詩人は皮肉をこめて歌った。「へつらいは友人をつくり、真理は憎しみを生む」と。「真理はひとびとに愛されていますが、その愛され方は、真理以外のものを愛しているひとは、自分の愛しているものが真理であることを望んでいるというしかたであり、しかもひとびとは自分が欺かれることを望んでいないので、きみは間違っていると指摘されたくもないのです」(第一〇巻二三章三四節)。

 すべてのひとが真理を愛しています。真理を嫌っている人はいません。他人をだまそうとしているひとでも、自分だけは真実を知っていたいと願っています。ところが、ひとは真理を愛しているがゆえに、かえって自分の誤りが指摘されることを憎み、突きつけられた事実を認めようとしません。人間の弱さはこのような倒錯を引き起こします。真理の尺度は自分ではありません。しかし、ひとは真理を愛するがゆえに、自分が真理の尺度であろうとします。アウグスティヌスにとって、このような思い上がりこそが最大の過ちでした。このような過ちに陥らないために、アウグスティヌスはすべてのもののつくり主である神に祈り、自分の弱さを告白したのです。

 アウグスティヌスは、自分の中に自分でも知らない自分があることに気づいたひとです。だから、自分とは何かを探究します。アウグスティヌスにとって自分を探究することは神を探究することと別ではありません。なぜなら、自分に知られていない自分も神にには知られており、自分を探究するとは、神に知られている自分を探究することだからです。現在の自分について第一〇巻の冒頭で、アウグスティヌスは、「わたしがあなたに知られているように、わたしはあなたを知りたい」と神に呼びかけています(第一〇巻一章一節)。

左近司祥子編著『西洋哲学の10冊』岩波ジュニア新書
西洋哲学の10冊 (岩波ジュニア新書)

西洋哲学の10冊 (岩波ジュニア新書)

 「真理を愛する」という「感情」を関わらせてしまうのが過ちの始まりなのであるのに、私たちは「愛」を捨てることができない。

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2011-10-18

[][][]嘘をつかない嘘つきの話~~安良岡康作『徒然草』旺文社 19:27 はてなブックマーク - 嘘をつかない嘘つきの話~~安良岡康作『徒然草』旺文社 - 蜀犬 日に吠ゆ

第七十三段

 世に語り伝ふる事、まことはあいなきにや、多くは皆(みな)虚言(そらごと)なり。

 あるにも過ぎて人は物を言ひなすに、まして、年月(としつき)過ぎ、境(さかい)も隔(へだゝ)りぬれば、言ひたきまゝに語りなして、筆(ふで)にも書き止(どゞ)めぬれば、やがてさだまりぬ。道々(みち\/)の物の上手のいみじき事など、かたくななる人の、その道(みち)知らぬは、そゞろに、神の如くに言へども、道知れる人は、さらに、信(しん)も起さず、音(おと)に聞くと見る時とは、何事も変るものなり。

 かつあらはるゝをも顧(かへり)みず、口に任(まか)せて言ひ散らすは、やがて、きたることと聞(きこ)ゆ。また、我(われ)もまことしからずは思ひながら、人の言ひしまゝに、鼻のほどおごめきて言ふは、その人の虚言(そらごと)にはあらず。げに\/しく所々(ところ\”/)うちおぼめき、よく知らぬよしして、さりながら、つま\”/合はせて語る虚言は、恐(おそろ)しき事なり。我がため面目(めんぼく)あるやうに言はれぬる虚言は、人いたくあらがはず。皆(みな)人(ひと)の興(きょう)ずる虚言は、ひとり、「さもなかりしものを」と言はんも詮(せん)なくて聞きゐたる程に、証人(しょうにん)にさへなされて、いとゞ定まりぬべし。

 とにもかくにも、虚言多き世なり。たゞ、常にある、珍(まづ)しからぬ事のまゝに心得たらん、万(よろづ)違(たが)ふべからず。下(しも)ざまの人の物語は、耳驚(おどろ)く事のみあり。よき人は怪(あや)しき事を語らず。

 かくは言へど、仏神(ぶつじん)の奇特(きどく)、権者(ごんじゃ)の伝記、さのみ信ぜざるべきにもあらず。これは、世俗(せぞく)の虚言をねんごろに信じたるもをこがましく、「よもあらじ」など言ふも詮なければ、大方(おほかた)は、まことしくあひしらひて、偏(ひとへ)に信ぜず、また、疑ひ嘲(あざけ)るべからずとなり。

安良岡康作『徒然草』旺文社
徒然草 (対訳古典シリーズ)

徒然草 (対訳古典シリーズ)

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2011-10-11

[][]玉川重機『草子ブックガイド』講談社 (その2) 18:36 はてなブックマーク - 玉川重機『草子ブックガイド』講談社 (その2) - 蜀犬 日に吠ゆ

草子ブックガイド(1) (モーニング KC)

草子ブックガイド(1) (モーニング KC)

 一巻で取り上げられている本をおさらい。

  • デフォー作 平田禿木訳 K・OKAMOTO画『ロビンソン漂流記』世界児童文学全集 夫山房仮定文庫
  • 星新一『ボッコちゃん』新潮文庫
  • 稲垣足穂『一千一秒物語』新潮文庫
  • トルーマン・カポーティ作 龍口直太朗(たつのくちなおたろう)訳「ダイヤのギター」『ティファニーで朝食を』新潮文庫
  • 中島敦著 安西水丸装画『山月記・李陵』ほるぷ出版 
  • 西行『山家集』
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2011-10-03

[][]玉川重機『草子ブックガイド』講談社 19:29 はてなブックマーク - 玉川重機『草子ブックガイド』講談社 - 蜀犬 日に吠ゆ

 流行ものに必死でついて行く私ってかっこいい。

草子ブックガイド(1) (モーニング KC)

草子ブックガイド(1) (モーニング KC)

 読書猿の白幡で有名なこの一冊。

 それほどの出来か? と思っていたのですがKURUKURUPATIOに敬意を表してえんとりします。

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