2011-10-26
■ [書留]左近司祥子編著『西洋哲学の10冊』岩波ジュニア新書 
「自分の中で自分に出会う アウグスティヌス 告白」 中川純男
すべてのひとは真理を愛している
アウグスティヌスはいいます――すべての人間が真理を求めている。「きみはだまされたいか」とたずねられて、「だまされたい」と答えるひとはひとりもいないことがその証拠である。しかしではなぜ、人間の世界は偽りに満ちているのか。ローマの詩人は皮肉をこめて歌った。「へつらいは友人をつくり、真理は憎しみを生む」と。「真理はひとびとに愛されていますが、その愛され方は、真理以外のものを愛しているひとは、自分の愛しているものが真理であることを望んでいるというしかたであり、しかもひとびとは自分が欺かれることを望んでいないので、きみは間違っていると指摘されたくもないのです」(第一〇巻二三章三四節)。
すべてのひとが真理を愛しています。真理を嫌っている人はいません。他人をだまそうとしているひとでも、自分だけは真実を知っていたいと願っています。ところが、ひとは真理を愛しているがゆえに、かえって自分の誤りが指摘されることを憎み、突きつけられた事実を認めようとしません。人間の弱さはこのような倒錯を引き起こします。真理の尺度は自分ではありません。しかし、ひとは真理を愛するがゆえに、自分が真理の尺度であろうとします。アウグスティヌスにとって、このような思い上がりこそが最大の過ちでした。このような過ちに陥らないために、アウグスティヌスはすべてのもののつくり主である神に祈り、自分の弱さを告白したのです。
アウグスティヌスは、自分の中に自分でも知らない自分があることに気づいたひとです。だから、自分とは何かを探究します。アウグスティヌスにとって自分を探究することは神を探究することと別ではありません。なぜなら、自分に知られていない自分も神にには知られており、自分を探究するとは、神に知られている自分を探究することだからです。現在の自分について第一〇巻の冒頭で、アウグスティヌスは、「わたしがあなたに知られているように、わたしはあなたを知りたい」と神に呼びかけています(第一〇巻一章一節)。
左近司祥子編著『西洋哲学の10冊』岩波ジュニア新書

- 作者: 左近司祥子
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2009/01/20
- メディア: 新書
- 購入: 1人 クリック: 8回
- この商品を含むブログ (7件) を見る
「真理を愛する」という「感情」を関わらせてしまうのが過ちの始まりなのであるのに、私たちは「愛」を捨てることができない。
自分の知らない自分って、何でしょうね。深層心理てきなものでしょうか。あるいは、自分探しの旅的な。