2011-11-05
■ [書留][歴史][唐宋]山内晋次『日宋貿易と「硫黄の道」』日本史リブレット75 山川出版社 
平安時代になって、中国の宋から硫黄の買い付け注文量が増加します。
これは、宋が燕雲十六州を始め現在の東北地方の領土を失ったためです。新期造山帯(ようするに火山地帯)を領域から失ってしまったため、唐代後半に開発されて重要視された黒色火薬(硝石・硫黄・木炭粉の混合物)を製造できなくなってしまったからです。まさか敵である遼(契丹)から輸入するわけにもいきませんからね。よって南宋はますます弱くなる。
地学・地政学から「宋の弱兵化」をとらえる知見。初めて知りました。こういうのを待っていた!
硫黄輸出の開始とその背景
宋における硫黄の用途
つぎに、(3)の用途について考えてみよう。そもそも火薬は、中国において、道家による練丹術のなかで唐代後半に発明されたと言われている。その火薬とは、黒色火薬であり、硝石・硫黄・木炭粉の混合によりつくられた。そして、宋代になると、火薬の兵器への利用が拡大し、北宋期の兵器や戦術を集大成した『武経総要』には、火薬の製法とさまざまな火薬兵器が記載されている。
そうすると、この宋代に入って、従来の燃料用・薬用中心のじきよりもはるかに、硫黄の需要が急増することになる。そして、このような中国における硫黄の用途の大きな変化と、先述の九八八年の日本産硫黄の輸出が始まる理由は、宋代中国における火薬原料としての大量需要の可能性がもっとも高いといえよう。
山内晋次『日宋貿易と「硫黄の道」』日本史リブレット75 山川出版社

- 作者: 山内晋次
- 出版社/メーカー: 山川出版社
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硫黄輸出の開始とその背景
宋における硫黄の用途
このように、中国における火山分布を参照すると、北宋・南宋を通じて、硫黄を国内で完全に自給することはまったく不可能だったはずである。とすれば、宋において火薬兵器が発達し、その需要が高まれば高まるほど、主要原料であるにもかかわらず国内で自給できない硫黄が大量に必要になってくる。
山内晋次『日宋貿易と「硫黄の道」』日本史リブレット75 山川出版社
(レアアースを埋蔵する内モンゴルや、油田のあるウイグルを粛々と弾圧する理由は分かるのですが、それはひどいのではないでしょうか。)
日本産硫黄の大量買付計画
恒常的な硫黄需要
たとえば宋と北方の大国・遼との関係を考えた場合、一〇〇四年の澶淵の盟(せんえんのめい)以降、両国はほとんど交戦することもなく、平穏な関係を維持していた。しかし、そのような平和な関係が維持されているにもかかわらず、宋側は長大な国境ラインに一〇〇万にのぼる大量の常備軍を張りつけていたのである。
山内晋次『日宋貿易と「硫黄の道」』日本史リブレット75 山川出版社
で、靖康の変(せいこうのへん)以降は実戦が増えるから、より需要が増えたのでしょうか。
元寇の「てつはう」を鑑みるに、宋代の黒色火薬兵器ってどんなものだったのでしょうね。
「てつはう」って、殺傷能力よりも騎馬隊を音で止めると聞き及んでおりますからねえ。
でも、竹崎季長先生は首級をあげてない(戦国価値観)ですからねえ。
酔ってきたので今日はおしまい。後半は、「じゃあ日本での硫黄産地ってどこ?」この話もスゲエ面白い。