蜀犬 日に吠ゆ

2011-11-10

[][][][][]冬のうた を読む(その3) 13:14 はてなブックマーク - 冬のうた を読む(その3) - 蜀犬 日に吠ゆ

5

 いかにせん いかにせんとぞ いはれける 物おもふ時(とき)の独(ひと)りごとには

                             隆達小歌


 泉州堺の僧高三(たかさぶ)隆達の創始になり、関ヶ原の戦(一六〇〇)前後おおいに流行した小歌は、隆達節歌謡と総称されるが、従来隆達小歌という呼び名で親しまれてきた。右は短歌形式だが、隆達小歌全体の中では、短歌形式はあまり多くない。「物おもふ」はここでは恋の物思い。しかし、意味をもっと広くとってみても、多くの人にとって、たしかに、とうなずける内容の歌ではなかろうか。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 どうしよう、どうしようと言っている時、どうすればいいのか分かっている人も多いんですよね。(例:あきらめる。)どうにかしてやる、と切りかわるまで、「物おもひ」はつづく。


6

 なにせうぞ くすんで 一期(いちご)は夢よ ただ狂へ

                   閑吟集


 近世室町歌謡。中世以降の歌謡には無常観という太い底流があることはたびたび書いた通りだが、この小歌はそれを端的に吐き出していて忘れがたい。なんだなんだ、まじめくさって。人生なんぞ夢まぼろしよ。狂え狂えと。「狂う」は、とりつかれたように我を忘れて何かに(仕事であれ享楽であれ)没頭すること。無常観が反転して、虚無的な享楽主義となる。そのふしぎなエネルギーの発散。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 あんまり冬っぽく感じませんけど。

折々のうた (岩波新書 黄版 113)

折々のうた (岩波新書 黄版 113)