蜀犬 日に吠ゆ

2011-11-15

[][][][][]冬のうた を読む(その8) 19:23 はてなブックマーク - 冬のうた を読む(その8) - 蜀犬 日に吠ゆ

15

 屋根(やね)\゛/はをとこをみなと棲(す)む三日月

                富沢赤黄男(とみざわかきお)


 『天の狼』(昭一六)所収。昭和三十七年五十九歳で逝去した新興俳句運動の代表的俳人。同時期(昭一六)の作「蝶墜(お)ちて大音響の結氷期」が有名で、さかんに論じられるが、赤黄男の持味はむしろ右のような句にすなおに現れている。「をとこ」は男、「おみな」は女。どこかおとぎ話風な情景だが、昭和十年代の大半を召集されて軍におり、大陸を転戦もした作者には、これは心うずく「生活」への夢の情景だったのかもしれぬ。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 半端ない字余りですね。これが新興俳句か。



16

 にこやかに酒煮(に)ることが女らしきつとめかわれにさびしき夕ぐれ

                      若山喜志子(わかやまきしこ)


 『無花果(いちじく)』(大四)所収。作者は明治四十五年若山牧水と結婚、牧水逝去(昭三)後は牧水創刊の「創作」を主宰して貫禄があった。酒なしには日を送れない牧水は、酒の名歌を数々残したが、新妻の歌にはそのいわば裏面の世界がある。来客でもあったのか、妻はにこやかに台所で酒を暖めながら、しかし心のうちではその「女らしきつとめ」を疑っている。「われにさびしき」に思いがこもって、単なる不平の歌に終わっていない。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 牧水の妻では仕方ないのではないでしょうか。もうどうしようもない感じがします。




折々のうた (岩波新書 黄版 113)

折々のうた (岩波新書 黄版 113)