蜀犬 日に吠ゆ

2011-11-16

[][][][][]冬のうた を読む(その9) 19:12 はてなブックマーク - 冬のうた を読む(その9) - 蜀犬 日に吠ゆ

17

 憂(う)きことを海月(くらげ)に語る海鼠(なまこ)かな

                 黒柳召波(くろやなぎしょうは)


 別号を春泥舎という江戸中期の俳人。与謝蕪村の高弟。クラゲとナマコの対話という題材は珍しく、句も新鮮だ。「あはれ」と「をかし」を兼ね備えている句といえよう。理屈をいえば、海底にいながら人にねらわれて食われるナマコが、水面にいるのに食用に不向きなため比較的安全なクラゲに対して、身の憂さ、辛さをぼそぼそ話している図と解されようが、そこまで理詰めに解さずとも、単に浮遊する者と這う者の会話と見るだけで面白い。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 こっそり聞いてるカクレウオ。



18

 われもまた渚(なぎさ)を枕(まくら)

 孤身(ひとりみ)の浮寝(うきね)の旅ぞ     島崎藤村


 『落梅集』(明三四)所収。歌曲としても広く愛誦される「椰子の実」の第四連。名も知らぬ南の島からはるばる日本の岸に漂着した椰子の実に寄せて、みずからの漂泊の思いを歌う。この種の旅情は古今東西の詩にたえず歌われるが、藤村は伝統的でときには陳腐でさえある用語をたくみに用い、明治の子女の感傷に快い形を与えた。「浮寝」は船などで水に浮いて寝ること。転じて漂泊の旅。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 「椰子の実」好きな歌ですね。

 「枯れた技術の水平思考」。珍奇な物言いを振り回さなくとも十分やっていけるはずははず。




折々のうた (岩波新書 黄版 113)

折々のうた (岩波新書 黄版 113)