蜀犬 日に吠ゆ

2011-11-17

[][][][][]冬のうた を読む(その10) 18:17 はてなブックマーク - 冬のうた を読む(その10) - 蜀犬 日に吠ゆ

19

 ふるさとは遠きにありて思ふもの

 そして悲しくうたふもの        室生犀星


 『抒情小曲集』(大七)巻頭の詩「小景異情」その二(全部で十行)の冒頭。有名な詩句だが、これは遠方にあって故郷を思う詩ではない。上京した犀星が、志を得ず、郷里金沢との間を往復していた苦闘時代、帰郷した折に作った詩である。故郷は孤立無援の青年には懐かしく忘れがたい。それだけに、そこが冷ややかである時は胸にこたえて悲しい。その愛憎の複雑な思いを、感傷と反抗心をこめて歌っているのである。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 これも好きな句ですねえ。「抒情小曲集」って、「リリカルセレナーデ」か。素敵なタイトルですね。


20

 ふりむけば障子(しやうじ)の桟(さん)に夜(よ)の深さ

                    長谷川素逝(はせがわそせい)


 『定本素逝集』(昭二二)所収。昭和二十一年四十歳で死んだ「ホトトギス」の俳人。応召して中国大陸を転戦、胸を病んで送還され、長い闘病生活に終始した。「障子」は風や寒さを防ぐ意味で近年冬の季語となったものだが、この句など、しんしんと深い冬の感じを言いとめて、障子の季感を冬に決定づけたような句だ。「桟」への着目もさることながら、「ふりむけば」がぶきみなほど鋭い。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 私はちょっと「ふりむけば」をわざとらしく感じました。じゃあ添削、なんてことをする能力はないんですけどね。


折々のうた (岩波新書 黄版 113)

折々のうた (岩波新書 黄版 113)