蜀犬 日に吠ゆ

2011-11-21

[][][][][]冬のうた を読む(その1422:26 はてなブックマーク - 冬のうた を読む(その14) - 蜀犬 日に吠ゆ

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 咳(せき)の子のなぞなぞあそびきりもなや

            中村汀女(なかむらていじょ)


 『汀女句集』(昭一九)所収。女性俳人は今日きわめて多いが、家庭の主婦たることと句作りとを最も幸福な形で調和させ得た俳人といえば、まずこの作者だろう。わが子を詠んだ句が多い上にすぐれてもいるのは、その事実を結びついた事といえる。風邪を引いて寝ている子が、相手になるように母親にせがみせがみ、なぞなぞ遊びに夢中になっている。せきこみながら、それでもいつまでもやめないのだ。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 こういうとき定番なのは母親の針仕事ですよ。現代の、共稼ぎの時代の子供たちはどうしているんでしょうね。私の頃はマンガでした。いまだとゲームなのでしょうか。



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 富人(とみひと)の家の児(こ)どもの着る身無(みな)み腐(くた)し棄(す)つらむ絁綿(きぬわた)らはも

                  山上憶良


 『万葉集』巻五。憶良は万葉歌人中、きわだって率直に家族への愛や暮らしむきの貧しさを歌った人である。この歌も、老いて長らく病床にある身で、子らの事を思う苦しさを歌った連作の一首。富んだ家の子は着物がたくさんあり、それを着尽くすには体が足りないので、むざむざ腐らして捨てているであろう、その絹よ、その綿よと、世の不公平を嘆く。「絁」は太さや織り方の不ぞろいな絹をいう。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 今は絁は「つむぎ」と訓じますね。飽食大国の話など聞くと、それなりに合理的に運用した結果そうなったのだとはいえ、歴史はくり返すというかなんというか、困ったものです。


折々のうた (岩波新書 黄版 113)

折々のうた (岩波新書 黄版 113)