2011-11-23
■ [筆記][国文][評論][折々のうた][冬歌]冬のうた を読む(その16) 
31
冬が来た。白い樹樹(きぎ)の光を体のうちに蓄積(ちくせき)しておいて、夜(よる)ふかく眠る
前田夕暮(まえだゆうぐれ)
『青樫は歌ふ』(昭一五)所収。明治四十年代、「明星」の浪漫的歌風に対抗する自然主義短歌の新進として出発したが、元来感覚的に鋭敏な資質の持ち主だったので、地味な写実には安住できず、新風追求に熱心な試みを重ねた。右の作のような口語自由律和歌もその重要な一環だった。葉が落ちて明るくなった冬の木々に日光が白く輝く。その光を身うちにたたみこんで、夜の黒い胎内でぐっすり眠るのだ、という。
大岡信『折々のうた』岩波新書
大岡先生の解釈が気色悪い。
32
中原(なかはら)よ。/地球は冬で寒くて暗い。
ぢや。/さやうなら。 草野心平(くさのしんぺい)
『絶景』(昭一五)所収の詩「空間」の全部。詩人中原中也は昭和十二年十月二十三日、三十歳で死んだ。右は亡友追悼の詩だが、発表は十四年四月「歴程」第六号。雑誌が第五号以後二年半も出なかったためらしい。筆者は少年時代、これを某選詩集で読み、詩というものは短い言葉でなんと多くの事を暗示できるものだろうかと、ひとり驚き、肝に銘じた思い出がある。
大岡信『折々のうた』岩波新書
マセガキ

- 作者: 大岡信
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