蜀犬 日に吠ゆ

2011-12-02

[][][][][]冬のうた を読む(その18) 19:58 はてなブックマーク - 冬のうた を読む(その18) - 蜀犬 日に吠ゆ

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 海暮れて鴨(かも)の声ほのかに白し

             松尾芭蕉

 芭蕉が江戸で売出し中の気鋭の俳人だったころ行なった『野ざらし紀行』の旅は、名古屋、熱田に蕉門を確立し、選集『冬の日』を生んだ記念的な旅となった。その尾張滞在中の句。海辺で一日を過ごした時の作と自柱する。とっぷり暮れた海づらを、鴨の声が渡ってくる。その声を「ほのかに白し」と感じた。「白し」はまた「顕(しる)し」だろう。しかしそれが「ほのかに」なのである。五五七の破調は、ゆっくり区切って読むと深沈たる感じがある。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 季語は何? と歳時記を繰ったところ「鴨」だそうで。渡り鳥なのですね。田んぼで飼育される合鴨はまた別なのかしら。

 宮城のお濠に沢山浮かんでおり、各地の海や湖沼でもよく見る水鳥である。シベリヤ方面から渡ってくると言う。雄はあおくびといい、頭や首が深紫で緑光を放っている。雌は真鴨といい、全体が茶色で黒い斑がある。雪の日の川や沼などに群れて泳いでいる。肉が美味で、狩猟の獲物となり、また鴨網といって網でとらえる。

『俳諧歳時記』冬・新年 新潮文庫

 海にもいるのか、、、


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 冬山の青岸渡寺(せいがんとじ)の庭にいでて風にかたむく那智の滝みゆ

                        佐藤佐太郎(さとうさたろう)

 『形影』(昭四五)所収。佐藤茂吉に師事し、その全集の編集に従事したのをはじめ、茂吉関係の著作が多い。西国三十三所第一番の札所青岸渡寺から那智の滝を遠望すると、繊美な一筋の帯が夢うつつにかかっているのを感じるが、作者は折からの冬景に、風を受けて滝がうつつにかたむくのを見たと感じたのである。「風にかたむく」が見どころだが、作者自身の心もその時そこでかすかに傾いた。「いでて」を、「みる」でなく自動詞「みゆ」で受けた技巧の老練。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 那智の滝、、、『熊野詣』。あこがれますね。

 「風にかたむく」どころか本県でもちゃらい滝は風に吹き散らかされて堕ちることすら許されないのが常道です。

 「みゆ」は、過去の助動詞をつかわない臨場感が半端ないですね。

折々のうた (岩波新書 黄版 113)

折々のうた (岩波新書 黄版 113)

俳諧歳時記 冬・新年 (新潮文庫 し 22-1)

俳諧歳時記 冬・新年 (新潮文庫 し 22-1)