蜀犬 日に吠ゆ

2011-12-03

[][][]山内晋次『日宋貿易と「硫黄の道」』日本史リブレット75 山川出版社 17:09 はてなブックマーク - 山内晋次『日宋貿易と「硫黄の道」』日本史リブレット75 山川出版社 - 蜀犬 日に吠ゆ

 日本と中国の貿易を、あまり代表的でない交易物から考察します。

 遣唐使船でパチャパチャやっている日本は放っておいて、唐宋変革を経た中国は、まさに大ジャンク時代。

 それまで、遣唐使船で行き来していた日本と中国の貿易品は、ごく限られたものでした。

第一部 原始・古代

第三章 貴族文化と国風文化

1 摂関政治

国際関係の変化
平安時代の交易

 9~10精機の日本と大陸との文物の交流についてみると、日本から大陸へは、金・銀や絹・綿などがもたらされ、大陸からはこれらを代価として工芸品・薬品や仏教の経典・仏具・仏像などが輸入された。

『詳説 日本史研究』山川出版社

 「国交」における献上品・下賜品ですから、その量ですみましたが宋が成立すると民間の貿易も始まり、規模が膨大なものになります。

第2部 中世

第4章 武家社会の成立

3 元寇と幕府の衰退

東アジアと日本

日宋間に正式な国交は開かれなかったが、私貿易は平安時代末期から鎌倉時代にかけて盛んであった。取引品のうち日本からの輸出品は金・水銀・硫黄・木材・米・刀剣・漆器・扇などで、唐物と呼ばれて珍重された輸入品は陶磁器・絹織物・香料・薬品・書籍(『太平御覧』や「一切経」)・銭などであった。このうち香料・薬品は東南アジア原産の品が南宋を経由して流入していたのであり、日本は南宋を中心とする通商圏に組み込まれていた。また宋の銭貨は南宋側がその流出を防ごうとしたほどに大量に日本にもたらされ、国内各地に急速に貨幣経済が浸透していった。

『詳説 日本史研究』山川出版社

 宋銭の輸入によって皇朝十二銭は、958(天徳2年)の「乾元大宝」をもって鋳造を終えます。

 しかし、私貿易でもたらされる宋銭が国内に流入するのは、国家にとってマクロ経済の統制が聞かなくなることにも等しいわけで、関税などの意識がない時代とはいえ平安朝廷にとっても懸念事項だったでしょうけれども、日本も宋もそれをとどめることはできませんでした。結局、鎌倉時代の経済は貨幣へと移行していきます。

宋銭(9)

 宋代に鋳造された中国の貨幣で、中国では元・明時代まで用いられた。本朝十二銭以後、日本では銭貨が鋳造されなかったので、宋銭が国内通貨として平安末期~室町時代に大量に輸入されて流通し、効能の銭納化を促した。

『日本史(B)用語集』山川出版社

 しかし、鋳造技術を持っていたにもかかわらず、それを放棄して宋銭を輸入し続けた意味はあったのでしょうか? 私貿易でインフレが起こってもかまわなかったのでしょうか?

 山内先生の話が面白い。

「硫黄」への注目

ちなみに、日宋貿易の時代の貿易船がどのような形態のものであったのか、具体的にはあまりわかっていない。ただ、中国の泉州沈船(ちんせん)(十三世紀後半)や韓国の新安沈船(十四世紀前半)などの実際に東南アジア・東アジア海域で活躍していた沈船の事例からみて、日宋貿易に利用されていた貿易船は一般的に、これらと同様な中国の尖底ジャンク型のもので、船長三〇メートル前後、船幅八~一〇メートル前後の船であったと推察される。

山内晋次『日宋貿易と「硫黄の道」』日本史リブレット75

 中世を代表する船として、「ゴーイング・メリー号*1」をよく引き合いに出すことがおおいのですが、そのモデルとなったキャラベル、「サンタ・マリア号*2」よりも大きいですよ。船長23メートルで127トン。これだけ船が巨大化し、木造であることも考えると、当然安定航行の上で底荷(バラスト)がもとめられます。逆に言うと、バラストで安価な重量物を互いに交易できることが海洋貿易のコスト要因になっていく時代なんですよ。これは正直、気づきませんでした。


「硫黄」への注目

ある程度、船の喫水線をさげて船体バランスを安定させるために、重量のある底荷(ばらすと)が必要になる。上述の新安沈船からは、約二八トン(約八〇〇万枚)もの銅銭が発見されているが、これなどはまさにその底荷の一部であろう。そうすると、日本から中国への帰航にあたって、日本金をたとえ数百キロ積載したとしても、それのみでは当然、船の安定を保つための底荷とはなり得ない。

山内晋次『日宋貿易と「硫黄の道」』日本史リブレット75

 で、平安後期に中国から硫黄の大量発注が来るのですけど、泥酔したのでおやすみなさい。




日宋貿易と「硫黄の道」 (日本史リブレット)

日宋貿易と「硫黄の道」 (日本史リブレット)

*1:山内氏同書内に、大阪で復元された全長三〇メートル、幅約九メートルの大和帆船の場合、バラスト重量は五六トンであり、船の総重量の36%であったことが記されていますが、遠洋航海するゴーイングメリー号のバラストってなんのでしょうねえ。

*2:そういえば、サンタ・マリアのバラストも知らない。