蜀犬 日に吠ゆ

2011-12-04

[][][][][]冬のうた を読む(その19) 19:48 はてなブックマーク - 冬のうた を読む(その19) - 蜀犬 日に吠ゆ

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 足軽のかたまつて行く寒さかな

         井上士朗(いのうえしろう)

 江戸時代後期の俳人。尾張の産、名古屋で産科医を業とした。国学を本居信長に学び、俳諧にも名声があった。随筆も含めて著作が多い。足軽は最下位の武士で、戦場では粗末な足軽具足をつけて歩兵となり、平時には走り使いの雑役に従った。冬のうそ寒い町なかを足軽が寄り添いあって通ってゆく。一人一人の闊歩でなく、かたまって急ぎ足に無言で通りすぎる姿が、冬の寒さをひとしお深める。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 時代劇をみての印象でも、江戸時代の冬は寒そうです。暖かい時には大手をふって道を行く武士たちも、冬の寒さには勝てない。外聞もなく寄り添うしかない寒さの強調が、この句の本意でしょうね。


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 夜(よ)は寒み夜床(よどこ)はうすし故郷(ふるさと)の妹(いも)がはだへはいまぞ恋しき

                         曾禰好忠(そねのよしただ)

 家集『曾禰好忠集』所収。平安中期歌人。彼の題材や詠法が当時の正統だった『古今集』の歌風

比して新奇なところが目立ったため、同時代には不遇だったが、後世評価が高まった。家集には不遇を嘆き焦慮する歌が多い。旅先で妻の肌を恋しいと歌う掲出作でもわかるように、恋歌に『古今集』以来の優美な情趣を盛るだけでは飽きたらず、生活のにおいをつよく歌にしみこませずにはいられなかった。そのあくの強さを後世が評価した。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 あんまり評価しないなあ。

折々のうた (岩波新書 黄版 113)

折々のうた (岩波新書 黄版 113)