蜀犬 日に吠ゆ

2012-01-04

[][][][][]冬のうた を読む(その20) 20:25 はてなブックマーク - 冬のうた を読む(その20) - 蜀犬 日に吠ゆ

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   独り碁や笹に粉雪のつもる日に

                   中勘助(なかかんすけ)


 『中勘助全集』所収。幼少年時代を描いた『銀の匙』で知られる作家中勘助には、詩集『琅玕(ろうかん)』があり、また後年は多くの随筆を書き、短歌や俳句も作った。漱石に推されて世に出たが文壇とは没交渉で、仏教的世界観に深く染まった作品を書き続けた。「山居しぐれてけづる牛蒡のかをり哉」「粕やいて鳥の話を書く夜かな」。いずれも孤独な瞑想者の句である。笹に降る雪は近世の歌謡などでも好んでも歌われ、冬の情趣を語る好題材だった。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 世間と没交渉だったのですね。『銀の匙』を読んだきりでしたが、随筆は面白いのでしょうか。評判を聞かないところをみるにあんまり面白くないのかもしれませんが、興味はあります。


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   うづみ火にすこし春あるここちして夜ぶかき冬をなぐさむるかな

                         藤原俊成(ふじわらのしゅんぜい)


 『風雅集』冬。平安末期の歌人で定家の父。父子の歌と歌論が後世に及ぼした影響は大きかった。「幽玄」という中国伝来の語も俊成によって日本に根づいた。『白氏文集』に「二月山寒クシテ少シク有リレ春」の句があり、『枕草子』一〇六段にこれを踏まえた挿話がある。俊成もこれらを受けているが、火桶の埋み火の感触を「すこし春あるここちして」と見た所にこの歌の発見と情の深さ、なつかしさがある。現代はこういう感覚をむざんに捨て去る傾向にあるが。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 返り点はどうやって表現すればいいのでしょうね。不勉強。

 『枕草子』一〇六段ってどういう話でしたっけ? 本棚を探ったけれど例によってみつからないので確認は後で。

 暖房の効いたところで暮らしていれば当然こういう感覚はなくなっていくでしょうね。「むざんに捨て去る」というよりも、「進歩的」であるという感覚がまっとうではないかと思います。単純に春夏秋冬の機微に触れる機会が減ったとも思えませんから。


折々のうた (岩波新書 黄版 113)

折々のうた (岩波新書 黄版 113)