蜀犬 日に吠ゆ

2012-01-05

[][][][][]冬のうた を読む(その21) 20:46 はてなブックマーク - 冬のうた を読む(その21) - 蜀犬 日に吠ゆ

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   うすらひは深山(みやま)へかへる花の如(ごと)

                    藤田湘子(ふじたしょうし)


 俳誌「鷹」(昭五三・三)所収。大正十五年生れの現代俳人。近作句集に『狩人』(昭五一)がある。水面に「うすらひ」すなわち薄氷が張っている。触れれば散りそうな清らかな薄さが、作者の脳裏に花の飛び去る姿をひらめかせたのだろう。「深山へかへる」に作者の工夫があるが、それを理づめで説明しようとすると、はたと困る。直感的に了解すべき句で、現代俳句の書かれ方の一例を示すものといえる。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 直感的に分からなかったので、評価しません。

 ひび割れの模様が花弁に見えたのではないでしょうかねえ。それでも「深山へかへる」がわかりません。


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   冬籠り虫けらまでも穴かしこ

              松永貞徳(まつながていとく)


 江戸初期の歌人で俳諧師。すぐれた歌学者でもあり、晩年、世に俳諧が盛んになるや、古典の教養をもってこの新興文芸に投じ、いわゆる貞門俳諧の祖となった。芭蕉ももとをたどればその流れから出た。「穴かしこ」は手紙の終わりにつくあいさつ語「あなかしこ」のもじり。虫が冬ごもりのあいさつに「あなかしこ」と言って穴にこもるという滑稽である。俳句も元はこういうもじりや語呂合わせの滑稽を楽しむ文芸から出てきたのだった。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 「前略」「かしこ」が対応していたかはさておいて、江戸初期でもう「あなかしこ」が定着していたのですねえ。戦国武将の書簡などでは、時候のあいさつだの末尾での礼儀などなかったようですから、いったいいつ頃こういう風習ができて、それも庶民のギャグでバカにできるほど普及したのでしょうね。茶道の師匠との往復書簡などでは形式があったのでしょうか。


折々のうた (岩波新書 黄版 113)

折々のうた (岩波新書 黄版 113)