蜀犬 日に吠ゆ

2012-01-08

[][][][][]冬のうた を読む(その24) 19:58 はてなブックマーク - 冬のうた を読む(その24) - 蜀犬 日に吠ゆ

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 冬の夜の星君なりき一つをば云ふにはあらずことごとく皆

                    与謝野晶子


 遺歌集『白桜集』(昭一七)の「星」連作より。晶子は夫寛の没後七年して昭和十七年五月に亡くなったが、遺歌集に収める多くの亡夫追慕の歌は、数においても質においても和泉式部の帥宮(そちのみや)挽歌を除けば他に比肩するものがない。思えばあなたは夜空の一つ星というののではなかった。すべての星だったのだという。冬の夜空に澄んで光る満天の星にうたれたことのある人なら、この歌に溢れている亡き人への賛美愛慕の心をまっすぐ受けとめることができるだろう。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 和泉式部クラスか。


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 骨を埋(うづ)むる 豈(あ)に墳墓(ふんぼ)の地を期せんや

 人間(じんかん) 到(いた)る処(ところ) 青山(せいざん)有り

                       村松香雲(むらまつこううん)


 幕末の志士。十五歳で故郷伊勢を出る時壁に書いて残したという七言絶句の転結。起承部は有名な「男児志を立てて郷関を出(い)づ 学もしならずんば死すとも還らじ」。「人間」は世間の意。「青山」は木の茂る山をいうが、ここでは墓。骨を埋める場所をなんで家代々の墓(「墳墓の地」)とだけ決める事があろう。世間どこにも、いざとなれば死場所はある、至る所が家郷なのだ。従来僧の釈月性の作とされてきたが、研究によって誤伝であることが明らかにされた。

大岡信『折々のうた』岩波新書

折々のうた (岩波新書 黄版 113)

折々のうた (岩波新書 黄版 113)