蜀犬 日に吠ゆ

2013-01-14

[][][][][]冬のうた を読む(その29) 19:31 はてなブックマーク - 冬のうた を読む(その29) - 蜀犬 日に吠ゆ

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 春日野はけふはな焼きそ若草のつまもこもれりわれもこもれり

                     よみ人しらず


 『古今集』巻一春上。早春、新草がよく育つよう枯野を焼く。春日山のふもとで野焼きする農民に、今日はやめておくれ、いとしい妻も私も野にこもっているから、とよびかけた歌で、明るい歌謡調のためであろう、広く愛誦された歌。「な……そ」は制止。「若草の」は、つま(夫・妻)の枕詞。正月最初の子の日、野に出て小松を抜き、また若菜を摘んで食べ、長寿を願う習慣があった。それに関係ある恋の歌。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 風習に名前すらない。「七草摘み」「七草がゆ」と関連がありそうです。


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 さねさし 相模(さがむ)の小野(をの)に 燃ゆる火の 火中(ほなか)に立ちて 問ひし君はも

                            古事記歌謡


 倭建(やまとたける)が相模の海で海神に阻止され、荒波を起こされて遭難しかけた時、妃の弟橘は海に沈んで波を鎮めた。その姫の最期(いまわ)の別れの歌として、『古事記』にのる。「さねさし」は相模の枕詞。相模の野で私たちが敵の火攻めにあった時、火中でも私を気遣ってくれたあなたよ、との意だが、倭建伝説を離れて読めばこれは農民の恋歌である。野焼きの火が燃えさかる中で、好きだと言ってくれたのね、あなたは。「問ふ」は妻問い、求愛すること。

大岡信『折々のうた』岩波新書

 「さねさし相模」って何でしょう。さねさしの語からイメージがわかない。

折々のうた (岩波新書 黄版 113)

折々のうた (岩波新書 黄版 113)