蜀犬 日に吠ゆ

2013-03-11

[][][][]祖殷帝の宝剣~~『列子』新書漢文大系 明治書院 12:50 はてなブックマーク - 祖殷帝の宝剣~~『列子』新書漢文大系 明治書院 - 蜀犬 日に吠ゆ

 衛国の孔周が所持している三口(みふり)の聖剣。そして父と子の、復讐の物語。

 はじまり(第一段)。

湯問篇

4 来丹の仇討ち(湯問第五・第十六章)

第一段

「本文」

 魏の黒卵、暱嫌(じっけん)を以て丘邴章(きゅうへいしょう)を殺す。丘邴章の子来丹、父の讎(あだ)を報ぜんことを謀る。

『列子』新書漢文大系 明治書院

4 来丹の仇討ち(湯問第五・第十六章)

第一段

「解釈」

 魏の黒卵という男は、私怨でもって丘邴章を殺してしまった。丘邴章の子の来丹は親のかたきを討とうと計画を立てた。

湯問篇『列子』新書漢文大系 明治書院

4 来丹の仇討ち(湯問第五・第十六章)

第一段

「背景」

 「暱嫌(じっけん)」については、張湛の注に「暱嫌、私恨」とあり、個人的な恨みのこと。

『列子』新書漢文大系 明治書院

 ところが、来丹は「外形はひどく弱々しく、飯粒を勘定して食べ、風の吹くのに連れて小走りに走るといった有様」。一方で黒卵の方はというと、「とび抜けて荒々しい心の持ち主で、腕力は百人に対抗できるほど」。「筋肉から骨格、皮膚・肉づきまで、人並みのものではなかった。首根をさし延べて刀を受け、胸を広げて矢を受け止めると、切っ先の方が砕けても、からだの方には傷跡もつかない。」ほんとうかなあ。中華お得意の陰陽論とはいえ、極端同士すぎる。ゴリアテゴリアト)にしても重い鎧を着けていたから弓矢を恐れないわけで、生身で刃を跳ね返すってのは常人の域を超えています。本分も「筋骨皮肉、人の類に非ず」。

 

 来丹の友だちの申他が心配して尋ねてきます。

4 来丹の仇討ち(湯問第五・第十六章)

第二段

 「本文」

 申他曰く、吾聞く、衛の孔周、其の祖殷帝の宝剣を得たり。一童子之を服すれば、三郡の衆を卻(しりぞ)くと。奚(なん)ぞ請わざる、と。

「解釈」

 申他が言うには、「私は次のようなことを耳にしている。それは、衛の国に孔周という人物がいて、その先祖は、殷の天子が使用した、りっぱな剣を手に入れた。この剣は、一人の小僧っ子が身につけても、大軍勢を撃退することができるとのことである。どうしてそれを頼まないのか」とのことであった。

『列子』新書漢文大系 明治書院

 探索の旅がはじまる。

列子 (新書漢文大系 24)

列子 (新書漢文大系 24)


[][][][]『炎の戦士クーフリン/黄金の騎士フィン・マックール』(ケルト神話ファンタジー)ちくま文庫 12:09 はてなブックマーク - 『炎の戦士クーフリン/黄金の騎士フィン・マックール』(ケルト神話ファンタジー)ちくま文庫 - 蜀犬 日に吠ゆ

はじめに

 ある民族について知りたかったら、その民族に伝わる物語を知ることです。民族に伝わる物語は、その民族の考え方、感じ方を伝えてくれるからです。英雄クーフリンの物語は、ケルト民族に伝わるものです。今日、このケルト民族の血を濃厚に伝えているのは、アイルランド、ウェールズ、そしてスコットランドのハイランド地方に住む人々です。一方、ベーオウルフの物語は、アングロ・サクソン民族のもので、ごくおおざっぱに言えば、イングランドとスコットランドのローランド地方の人々は多くがアングロ・サクソン人です。このふたつの物語は非常に異なる世界観に基づいており、ケルト民族がベーオウルフを産むことはありえず、逆にアングロ・サクソン民族がクーフリンを産むことも、絶対にありえません。

 アングロ・サクソン人の物語は、どれほど大胆に見えても、しっかりと地面に足がついています。だからベーオウルフとその仲間たちは、英雄という大きな人間ではありますが、あくまで人間の範疇を越えません。ところがケルトの物語は、簡単に現実を飛びこえ、空想世界へと飛躍します。赤枝戦士団の勇者たちの血管には、神々と妖精属(アイルランドに伝わる妖精とほぼ同じ種類です)の血が、熱くたぎっているのです。どちらの物語を読む場合も、この違いを知っておくといいでしょう。そしておおむね、今の英国人のご先祖は、クーフリンを産んだ民族かベーオウルフを産んだ民族、あるいはその両方が混ざった人々であることも知って欲しいと思います。

サトクリフ『炎の戦士クーフリン/黄金の騎士フィン・マックール』(ケルト神話ファンタジー)ちくま文庫

 デーン人や、フランスのブルターニュ地方の人々、ノルマンディー。これらは少数派なのでしょうね。サトクリフ先生。

 神話や伝説だけではなくて、その文化圏における「文学のありよう」は、「民族に伝わる物語は、その民族の考え方、感じ方を伝えてくれる」ものです。価値観が一方的にならないように気をつけながら、すこし霧に包まれたシャーウッドの森を探索に出かけます。