蜀犬 日に吠ゆ

2013-03-11

[][][][]『炎の戦士クーフリン/黄金の騎士フィン・マックール』(ケルト神話ファンタジー)ちくま文庫 12:09 はてなブックマーク - 『炎の戦士クーフリン/黄金の騎士フィン・マックール』(ケルト神話ファンタジー)ちくま文庫 - 蜀犬 日に吠ゆ

はじめに

 ある民族について知りたかったら、その民族に伝わる物語を知ることです。民族に伝わる物語は、その民族の考え方、感じ方を伝えてくれるからです。英雄クーフリンの物語は、ケルト民族に伝わるものです。今日、このケルト民族の血を濃厚に伝えているのは、アイルランド、ウェールズ、そしてスコットランドのハイランド地方に住む人々です。一方、ベーオウルフの物語は、アングロ・サクソン民族のもので、ごくおおざっぱに言えば、イングランドとスコットランドのローランド地方の人々は多くがアングロ・サクソン人です。このふたつの物語は非常に異なる世界観に基づいており、ケルト民族がベーオウルフを産むことはありえず、逆にアングロ・サクソン民族がクーフリンを産むことも、絶対にありえません。

 アングロ・サクソン人の物語は、どれほど大胆に見えても、しっかりと地面に足がついています。だからベーオウルフとその仲間たちは、英雄という大きな人間ではありますが、あくまで人間の範疇を越えません。ところがケルトの物語は、簡単に現実を飛びこえ、空想世界へと飛躍します。赤枝戦士団の勇者たちの血管には、神々と妖精属(アイルランドに伝わる妖精とほぼ同じ種類です)の血が、熱くたぎっているのです。どちらの物語を読む場合も、この違いを知っておくといいでしょう。そしておおむね、今の英国人のご先祖は、クーフリンを産んだ民族かベーオウルフを産んだ民族、あるいはその両方が混ざった人々であることも知って欲しいと思います。

サトクリフ『炎の戦士クーフリン/黄金の騎士フィン・マックール』(ケルト神話ファンタジー)ちくま文庫

 デーン人や、フランスのブルターニュ地方の人々、ノルマンディー。これらは少数派なのでしょうね。サトクリフ先生。

 神話や伝説だけではなくて、その文化圏における「文学のありよう」は、「民族に伝わる物語は、その民族の考え方、感じ方を伝えてくれる」ものです。価値観が一方的にならないように気をつけながら、すこし霧に包まれたシャーウッドの森を探索に出かけます。