蜀犬 日に吠ゆ

2013-10-02

[][]郭沫若 平岡武夫訳『歴史小品』岩波文庫 22:31 はてなブックマーク - 郭沫若 平岡武夫訳『歴史小品』岩波文庫 - 蜀犬 日に吠ゆ

 春秋から秦漢の短篇。目次を書き写してみます。

目次
  • 老子 函谷関に帰る……五
  • 荘子 宋を去る……二一
  • 孔子 粥にありつく……三七
  • 孟子 妻を出す……四五
  • 始皇帝の臨終……五九
  • 項羽の自殺……七五
  • 司馬遷の発憤……一〇五
  • 賈長沙 痛哭す……一二三
  • 訳注
  • あとがき
郭沫若 平岡武夫訳『歴史小品』岩波文庫
歴史小品 (岩波文庫 赤 26-2)

歴史小品 (岩波文庫 赤 26-2)

 おもしろかった。

  • 老子、函谷関に帰る
    • 『道徳経』を授かった関尹(かんいん)が「無為の境地」を楽しんでいると、牛に乗って去った老子が帰って来る。
      • 勝手に白牛だと思っていましたが、ここでは黒牛。
    • 「老人と牛」で砂漠の旅は、それは苛酷でしょうが、そういう問題でもないような気がします。
  • 荘子 宋を去る
    • 荘子が友達の恵施(恵子)に会いに行く。
    • 何となれば、妻に先立たれて寂しいからである。
      • 歌ったり琴を弾いたりしたのは、ポーズにすぎなかった!
      • 老荘に何か恨みでもあるのか。
  • 孔子 粥にありつく
    • これが一番面白かった。
    • 『呂子春秋』の話のままだそうで、この故事初めて知った。(後述)
    • 儒家のことも馬鹿にしているのか。
    • あの顔回が盗み食いをする!?
  • 孟子 妻を出す
    • 修行の足りないのを嫁の所為にする孟子。
  • 始皇帝の臨終
    • 書き出し「始皇帝は、またしても、転換の発作をおこして、船の上にぶっ倒れた。」もう少し書き様はなかったのでしょうか。
      • よく見ると、聖上に対してまるっきり尊敬語が使われていません。最上級で敬意を払うべきキャラなのに。
    • 焚書坑儒を悔やむ。
  • 項羽の自殺
    • これは泣ける。「……呂馬童。(略)お前は、以前に、わしによくしてくれたことがあった。わしは、いま、わしのこの首をお前にくれてやろう。……」
    • いきなり始まる生命賛歌。「「早く来なさい。私と一しょに生命の頌歌を歌おう。」」
      • 人間賛歌は勇気の賛歌!
  • 司馬遷の発憤
    • 中書令(えらい役)となった司馬遷のもとへ任少卿が訪れる。
    • その物言いがいちいち癇に障るというだけの物語。
    • しかし司馬遷も『史記』編纂の苦労を語ったり、史記に込められた工夫を情熱的に自慢したりとなかなかに自意識過剰。
  • 賈長沙 痛哭す
    • 賈長沙が痛哭する。


訳注

 『呂子春秋』の文は、次のとおりである。

 孔子 陳蔡の間に窮す。藜羹(れいこう)を斟(く)まず。七日 粒を嘗めず。昼 寝(よこた)わる。顔回 米を索(もと)む。得てこれを爨(かし)ぐ。幾(ほと)んど熟す。孔子 顔回がその甑(こしき)の中より攫(つか)みてこれを食(は)むを、望み見る。選間にして食熟す。孔子に謁して食を進む。孔子佯(いつ)わりてこれを見ずとなす。孔子起ちて曰く、今、夢に先君を見たり。食は潔(きよ)くして後に饋(すす)む、と。顔回対(こた)えて曰く、不可なり。嚮(さき)に煤炱(すす) 甑中に入(お)つ。食を棄つるは不祥なり。回 攫みてこれを飲みたり、と。孔子歎じて曰く、信ずる所は目なり。而して目は猶お信ずるべからず。恃む所は心なり。而して心は猶お恃むに足らず。弟子 これを記せ。人を知ること固より易からざるなり、と。

 「藜羹」は野草のあかざを実にした知る。「粒」は穀物。「選間」は須臾(しゅゆ)、短かい時間。

郭沫若 平岡武夫訳『歴史小品』岩波文庫