2013-12-27
■ [書留][儒教][大学]金谷治訳注『大学・中庸』岩波文庫 「第六章」 
第六章 凡そ四節
三
楚書曰、楚国無以為宝、惟善以為宝、
舅犯曰、亡人無以為宝、仁親以為宝、
秦誓曰、若有一个臣、断断兮無他技、其心休休焉、其如有容焉、人之有技、若己有之、人之彦聖、其心好之、不啻若自其口出、寔能容之、以能保我子孫、黎民亦尚有利哉、人之有技、媢疾以悪之、人之彦聖、而違之俾不通、寔不能容、以不能保我子孫、黎民亦曰殆哉、唯仁人放流之、迸諸四夷、不与同中国、此謂唯仁人為能愛人能悪人、
見賢而不能挙、挙而不能先、命也、見不善而不能退、退而不能遠、過也、好人之所悪、悪人之所好、是謂払人之性、葘必逮夫身、
是故君子有大道、必忠信以得之、驕泰以失之、
楚書に曰わく、「楚国には以て宝と為すものなし、惟だ善(人)以て宝と為す」と。
舅犯(きゅうはん)曰わく、亡人(ぼうじん)には以て宝と為すものなし、仁親以て宝と為す」と。
秦誓に曰わく、「若し一个(いっか)の臣ありて、断断兮(だんだんけい)として他の技なきも、その心休休焉(きゅうきゅうえん)としてそれ如(能)(よ)く容るるあり。人の技あるは、己れこれを有するが如く、人の彦聖(げんせい)なるは、その心これを好(よみ)す。啻(ただ)にその口より出だすが若くするのみならず、寔(まこと)に能くこれを容れて、以て能く我が子孫を保んずれば、黎民(れいみん)も亦た尚お利あらんかな。人の技あるは、媢疾(ぼうしつ)してこれを悪(にく)み、人の彦聖なるは、而(乃)(すなわ)ちこれに違いて通ぜざらしむ、寔に容るる能わずして、以て我が子孫を保んずる能わざれば、黎民も亦た曰(ここ)に殆(あや)うからんかな」と。
唯だ仁人のみ、これを放流し、諸(こ)れを四夷に迸(しりぞ)けて、与(とも)に中国を同じくせず。此れを唯だ仁人のみ能く人を愛し能く人を悪(にく)むと為す、と謂うなり。
賢を見るも挙ぐるも能わず、挙ぐるも先にする能わざるは、慢(おこた)るなり。不善を見るも退くる能わず、退くるも遠ざくる能わざるは、過ちなり。人の悪む所を好み、人の好む所を悪む、是れを人性に払(もと)ると謂う。葘(わざわい)は必ず夫の身に逮(およ)ぶ。
是の故に君子に大道あり、必ず忠信以てこれを得、驕泰(きょうたい)以てこれを失う。
金谷治『大学・中庸』岩波文庫

- 作者: 金谷治
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