蜀犬 日に吠ゆ

2010-08-19

[][][]滑って転んでおおいたけん~~ジェイソン・グッドウィン『イスタンブールの群狼』ハヤカワ・ミステリ文庫 19:43 はてなブックマーク - 滑って転んでおおいたけん~~ジェイソン・グッドウィン『イスタンブールの群狼』ハヤカワ・ミステリ文庫 - 蜀犬 日に吠ゆ

 ミステリを読まないことは、時間を有効に使う技術の一つであると信奉しているわたくし母里ですが、まあオスマントルコ改革期の1836年、イスタンブルで近衛新軍士官の惨殺死体が連続発見されるとなると食指が……

 事件は1926年に廃止されたイェニチェリに関わる、と主人公である白人宦官ヤシムは調査しますが、つぎつぎ起こる猟奇殺人や新キャラの連続投入や、たまのアクションシーンを読んでいて、これはミステリなんだろうかと疑問を持ちましたが、ちゃんとミステリ仕立てでした。で、最後のアクションはないのな。

 作者はオスマントルコの歴史家で、小説はこの作品が初めて。日本では佐藤賢一的な感じなのでしょうか。イスタンブルやイェニチェリ殲滅の顛末などに関する蘊蓄は、大変ためになりました。『血と砂』のような前線では、マムルークが幅をきかせていましたが、首都はまた異なる様子。あと、ヤシムが料理をすることや市場(バザル)の食べ物の話なども興味深く、謎解き云々よりもそちらが「ためになる」本であったと言えましょう。やっぱし、みんな飲んでるよなあ……アルコール飲料を。

http://katawareboshi01.g.hatena.ne.jp/mori-tahyoue/20090816/1250408898

http://katawareboshi01.g.hatena.ne.jp/mori-tahyoue/20090820/1250771299

2010-05-27

[][][]清水義範『目からウロコの世界史物語』集英社文庫 00:11 はてなブックマーク - 清水義範『目からウロコの世界史物語』集英社文庫 - 蜀犬 日に吠ゆ

 読んでいるうちに日付またいでしまいました。

 もう寝る。

シミズ式 目からウロコの世界史物語 (集英社文庫)

シミズ式 目からウロコの世界史物語 (集英社文庫)

2009-08-20

楊貴妃

[][][][]故郷を守るために死す~~ローズマリ・サトクリフ『血と砂』下 原書房 21:28 はてなブックマーク - 故郷を守るために死す~~ローズマリ・サトクリフ『血と砂』下 原書房 - 蜀犬 日に吠ゆ

 敗北、敗北、敗北!

  • 第十七章 アラビアへの遠征
    • オスマン帝国に逆らいヒジャズを占拠する砂漠の狂信者ワッハーブ。
    • トゥスン長官殿とトマスは聖地奪回の軍を率いて紅海を渡る。
    • ムハンマド・アリが根回ししたはずの、砂漠の部族は参戦を拒否。
    • 攻撃隊はジェダイダの隘路を越えてメディナを攻めると決定。
  • 第一八章 攻撃前夜
    • トマスは騎兵の練兵と、トゥスンとの一騎打ちを演習する。 
  • 第十九章 ジェダイダの敗北
    • 後詰めのアブドッラー・イブン・サウドが神速でジェダイダに到達。トルコ軍壊滅。
    • トマスの騎兵は歩兵を援護しつつ退却に成功。
      • ザイドは生死不明。
  • 第二〇章 メディナへ
    • トゥスン負傷のため、アーメド司令官の指揮下、メディナを攻撃。
    • エジプトからの援軍も到着し、城壁を地下から爆破してメディナを攻略。
  • 第二一章 メディナの略奪
    • メディナ守備隊長のハンムド・アル・ラクシは降伏。しかし城砦を明け渡したのち、降伏条件を無視した部族民とメディナ市民が武装解除されたワッハーブ兵士を虐殺。
    • アーメド司令官は犯人の割り出しを命じるが、それは「乱取りの黙認」を含むものであった。
  • 第二二章 アノウドとの出会い
    • トマスは無法地帯となったメディナ市街にでかけ、少女アノウドを強姦から救う。
    • アノウドはメディナ大虐殺で家族を失ったので、トマスの宿舎に身を寄せる。
  • 第二三章 トマスの結婚
    • トゥスンが宣戦に復帰。アーメド司令官は辞任。
    • トマスはアノウドと結婚する。
  • 第二四章 婚礼の夜
    • トマスは婚礼の夜を過ごす。
    • トマスはメッカへ出立する。
  • 第二五章 メッカにて
    • ムハンマド・アリがメッカに到着。大総督ガーリドと同盟を行う。
    • トゥスンは父の命をうけてガーリドを拘束し、メッカを去らせる。
  • 第二六章 魔女ガリア
    • ワッハーブの砦トゥラバを守るのは女長老にして魔女たるガリア。
    • トゥスンとトマスは手ひどい敗北を喫し、ターイフへ退却する。
  • 第二七章 峠の攻防
    • 退却中、敵軍に回り込まれ追撃戦が始まる。
    • トマスは敵の砲兵隊を破り、奪った野戦砲で味方の退却を援護する。
  • 第二八章 つかのまの安らぎ
    • トマスはターイフに駐在し、アノウドをメディナから呼びよせる。
    • ジッダ総督となったトゥスンが訪ねてくる。
  • 第二九章 メディナ総督
    • メッカは巡礼が大々的に復活。
    • トマスはメディナ総督に任命される。
  • 第三〇章 メディナ入城
    • トゥスンはおとり部隊としてナジュド遠征。トマスも従軍してカッシムへ向かう。
    • ムハンマド・アリはクンフサを攻略し、作戦終了。
  • 第三一章 カッシム侵攻の賭け
    • ムハンマド・アリは助命を約束した捕虜のうち十二人をメッカ市門前で串刺しにし、部族民から反感を買う。
    • ムハンマド・アリはカイロに帰還。トゥスンは職を解かれてヒジャズに取り残され、カッシム侵攻で挽回しようとする。
  • 第三二章 窮地に陥ったトゥスン
    • トゥスンはリヤドのイブン・サウドから邀撃され、トマスに援軍を要請。
  • 第三三章 トマスの危機
    • トゥスンと対峙するワッハーブの兵は夜間に移動を始める。
  • 第三四章 最後の戦い
    • トマスの援軍はトゥスンと合流する前にアブドッラー・イブン・サウドの主力と接敵する。
    • トマスはアブドッラーと会見し、半時間後の開戦を約束する。
    • トマスは再び万物は一なることを感じつつ、スコットランド第七八高地連隊の喊声、「クイディフン・リグ――王を救え!」を叫ぶ。
    • 同時刻、アノウドは身重の体を階段から投げ出す。
  • その後の物語
    • トゥスンはデルタ地帯に帰り、伝染病で死ぬ。


 アラビア風用語のメモ。

  • 大総督―シャリーフ (聖都メッカの支配者)
  • 族―ベニ (イエハイネ族はトルコ側。ハルブ族、ソブフ族などははじめワッハーブ側。)
  • 族長―シャイフ
  • 練兵場―マイダーン
  • 集団―キャラバン (巡礼の集団)
  • 広場―マイダーン (練兵場との相違は不明。)
  • 外衣―バーヌース (アバとの相違は不明。)
  • 女長老―シーカ
  • 幽霊―ジン
  • 悪魔―アフリート
  • 魔王―イブリス
  • 市場―スーク
  • 総督―アミール
  • 聖布―キスワ
  • 聖殿―カーバ
  • 女医―ハキミ
  • 聖典―コーラン
  • 外衣―ディスダッシャ (アバ、バーヌースとの相違は不明。アノウドが着ていたので女物か。)

2009-08-16

[][][][]故郷に出会う~~ローズマリ・サトクリフ『血と砂』上 原書房 16:48 はてなブックマーク - 故郷に出会う~~ローズマリ・サトクリフ『血と砂』上 原書房 - 蜀犬 日に吠ゆ

 読了。

 サトクリフのローマ・ブリテン三部作は、主人公たちが滅び行くローマ帝国と新しいブリトン・サクソンの国々とのあいだで自己の依って立つ場所を求めてゆく悩みが物語を悲しく彩りました。

 白馬の騎士は、自らの荘園のために戦う男と、その心に安らぎを与えたいとする女の物語。


 『血と砂』は、全てを失った男の物語。故郷を失うということは、全てを失うことにひとしい。では、失ったあとの人生はどのようなものになるのか。それは、故郷を新しく取り戻す、ということ。

  • 第一章 エジプトの戦い
    • 祖父のブルームリグ農園を父が処分したとき、全てを失ったと感じたトマス・キースは家を出て志願兵となり、オスマントルコ軍に敗れる。
  • 第二章 捕虜
    • トマスはアーメド司令官に買われて将校となる。
    • ドナルド・マクラウドもまた同じように軍医として遇される。
    • フランス砲兵大佐でオスマン軍事顧問のデジュリエの知遇を得る。
  • 第三章 コーラン
    • トマスはアスワンでベドウィン騎馬部隊とともに訓練を受ける。
    • デジュリエ大佐からコーランを贈られる。
  • 第四章 兄弟の絆
    • ベドウィン騎兵隊長のザイド・イブン・フセインのもとで訓練を受ける。
      • 馬泥棒をともに撃退したことから、ザイドとトマスは友情を感じるようになる。
  • 第五章 神はひとり
    • トマスは砂丘の瞑想で万物が一つであると感じ、信仰の指導者を求める。
  • 第六章 トゥスンとの出会い
    • トマスは馬泥棒から奪ったフランス製の十字軍時代の剣をデジュリエ大佐に贈る。
    • エジプト太守の長男イブラヒム長官殿がアスワンに来る。その弟トゥスン殿とトマスは仲良くなる。
      • それまでトゥスンの寵臣であったマムルーク、アジズはトマスに敵意をいだく。
  • 第七章 イスラム教徒
    • トマスはカイロに移る。トゥスンがトマスを買う。
      • 騎兵二連隊の訓練将校となる。
    • トマスは回収して割礼をすませ、イブラヒムとなる。
  • 第八章 後宮の宴
    • トマスはトゥスンの母アミナの晩餐会に出席する。
    • トゥスンの娘ナイリお嬢様とも会う。
  • 第九章 決闘
    • アジズに侮辱されたトマスは決闘を申し込み、アジズを殺す。
    • 決闘は正式なものであったが、トマスは将校殺害のとがで逮捕される。
  • 第十章 死刑の宣告
    • トマスの死刑は、オスマン帝国から来たアッバス長官殿の横やりが入ったためであった。
  • 第十一章 生への帰還
    • アミナ奥方はアッバス長官殿と面会して死刑を要求することを考え直させる。
  • 第十二章 トゥスンの婚礼
    • トゥスンが結婚する。
    • トマスはヌビア人の巨漢ムバラクと会う。素手で男のクビをへし折る筋力と猫のようにひそやかな足どりの男。
  • 第十三章 誘惑の夜
    • トマスはナイリお嬢様と夜に密会し、誘惑されるが拒否する。ナイリお嬢様はトマスに敵意をいだく。
  • 第十四章 ナイリの奸計
    • マムルーク護衛部隊のスレイマン・イブン・マンスールはナイリの情人(の一人)。愛人からそそのかされてトゥスンにトマスを讒言する。トゥスンはトマスを殺すようスレイマンに命じる。
  • 第十五章 刺客たちの襲撃
    • 十人の刺客がトマスの宿舎を襲撃。トマスは八人を殺し、二人は逃げる。
    • アミナ奥方はナイリお嬢様と牛のようなムスタファ殿との結婚を決める。
  • 第十六章 マムルークの壊滅
    • エジプト太守ムハンマド・アリは宴会に招いたマムルークをマスケット銃兵で虐殺する。
    • ドナルドは回収してオスマン医師となる。

 故郷を失ったトマスは、砂漠とイスラームに自分の居場所を見出します。生きてゆくために頼ることができるのは、射撃の腕前とわずかな友情のみ。しかし、その友情も不安定なものでしかなく、むしろ戦闘力が高くて昇進してしまったがゆえにつぎつぎと苦難・危難に襲われることになってゆきます。


下巻の感想につづく。



 エジプトを中心に話が展開するので、時おり用語にアラブ語系統のルビが振られます。

  • 司令官―アーガ
  • 三角州―デルタ
  • 旦那―エフェンディ
  • 長衣―ローブ (アラブ系統の言葉ではないけれど、ここではトルコ風の長衣をさします。)
  • 高地地方―ハイランド (これはスコットランドの地方名)
  • 外衣―アバ
  • 丸屋根―ドーム
  • 光塔―ミナレット
  • 祈禱告知係―ムアッジン
  • 唐草模様―アラベスク (「唐草」だけでもアラベスク)
  • 皇帝―スルタン
  • 指導者―カリフ
  • 白装束―ソーブ (眠るときや、下着として着るらしい。)
  • 了解―アイワ
  • 上官殿―シディ (命令されたら「アイワ、シディ」と返す。「イエス、サー」のようなものでしょうか。)
  • 章―スーラ (コーランの章のこと。)
  • 長官殿―パシャ (そしてパシャが司令官とあてられる時もありまして、アーガとの相違は不明。)
  • 殿―ベイ (「トゥスン殿」「アジズ殿」のように、呼びかけのとき名前のあとにつける。)
  • 広場―マイダーン
  • 迫持―アーチ (これはムーア式とあるのでヨーロッパとは異なるデザインの建築なのでしょう。)
  • 縞瑪瑙―オニキス (これはギリシア系統)
  • 後宮―ハーレム
  • 寺院―モスク
  • 識者―ウラマー
  • 小部屋―アルコープ
  • 族長―シャイフ
  • 魔王―イブリス
  • 外着―バーヌース
  • 部屋着―ディスダシャ
  • 月下香―チュベローズ
  • 医師―ハキム (丁寧に「アルハキム」とするときもある。たぶんアルは冠詞。)
  • 殿―エフェンディ (「オスマン殿」のように呼びかける。ベイとの相違は不明。)


追記

 表紙のイラストが、アラビアのロレンスの映画にそっくりなのはなぜでしょう。

アラビアのロレンス 完全版 [DVD]

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