蜀犬 日に吠ゆ

2015-02-09

[][][][]十字軍研究の今 16:51 はてなブックマーク - 十字軍研究の今 - 蜀犬 日に吠ゆ

『西洋中世史研究入門』名古屋大学出版会より

(1)十字軍運動
十字軍とは何か

特に日本においてのことであるが、「十字軍とは、聖地エルサレムの奪回を目的としたキリスト教徒の軍隊であり、7回ないし8回行われたが、徐々に当初の宗教的目的が薄れて最終的には13世紀にその終焉を迎える」といった類の教科書的記述を十字軍の理解の前提にしないことが必要である。

『西洋中世史研究入門』名古屋大学出版会

 次に世界史の教科書が大きく変わるとすればこのあたり、らしいです。

(1)十字軍運動
十字軍とは何か

複雑極まりない十字軍研究の現状においても、概ね次の点では共通見解を得ていると言えよう。十字軍の本質は贖罪にあり、十字軍に「宗教的、政治的、経済的云々」と現代的価値観に基づいた評価を下すのは歴史学的には意味をなさないこと、十字軍とは連続的な運動であり、「第○回」という表現は便宜的に付けられているに過ぎないこと、1274年のリヨン普遍教会会議に十字軍運動の前・後期の分岐点を置くことなどである。教科書的記述の問題点については、八塚春児(1994*1)でも指摘されており、教科書の記述は書き改められるべき時期を迎えているのではなかろうか。

『西洋中世史研究入門』名古屋大学出版会

 というご意見もわかりますが、十字軍の研究が複雑化してテーマも多岐にわたって広がり続けている現状では、十字軍の記述を改める時期とは言いがたいのではないでしょうか。総括的な研究成果が出されてから教科書の記述を書き改めるのがよいかと思われます。

*1:八塚春児(1994)「第1回十字軍の招集」『歴史と地理』471

2015-01-11

[][][]中川右介『常識として知っておきたい クラシック音楽50』KAWADE夢新書 16:57 はてなブックマーク - 中川右介『常識として知っておきたい クラシック音楽50』KAWADE夢新書 - 蜀犬 日に吠ゆ

 買ったけれども投げ出してしまっていた本が出てきました。一応備忘として目次を写しておきます。あとで中身の悪口を言うかも(あとでとお化けは出たためしなし)。毛嫌いは止めて、軽い気持ちで読み直すことにします。

常識として知っておきたいクラシック音楽50/もくじ

Chapter 1 「さわり」だけでも聴いておくべき名曲の中の名曲
  • 運命 ベートーヴェン
    • ネーミングの勝利で一躍、有名曲に…/20
    • 運命が扉を叩いた時、新たな時代が始まった/21
    • これが(運命)定番解釈/23
  • 未完成 シューベルト
    • シューベルト自身の人生も、「未完成」だった/26
    • 短い生涯だが、多作で「歌曲王」となる/29
  • 悲愴 チャイコフスキー
    • 果てしない暗さに心打たれる名曲/30
    • 常識を破ったから、名曲/32
    • これらで急死か、同性愛に悩んで自殺か/34
  • 新世界より ドヴォルザーク
    • 名曲を寄せ集めた名曲/36
    • スラブ、ボヘミア、そして祖国への愛/38
  • 巨人 マーラー
    • 二〇世紀前半での不遇と、後半でのブーム/40
    • 最後の交響曲作家/42
    • マーラーが抹殺された理由、復活した理由/44
  • 交響曲第四〇番 モーツァルト
    • 相反する二つのモーツァルトのイメージ/46
    • モーツァルトは自作をどう呼んだか/47
    • 今流行の演奏方法とは/50
  • G線上のアリア バッハ
    • 作曲者自身も知らない曲名/52
    • バッハが「音楽の父」である理由/53
    • 専属作曲家からフリーへ/55
  • 四季 ヴィヴァルディ
    • バロック音楽の代表曲の一つ/57
    • 二〇世紀になって復活した名曲/59
  • 別れの曲 ショパン
    • ショパンの最も美しい調べの曲/61
    • 歴史の転換点に生きた芸術家/63
    • 現代の感覚に直結するピアノ曲/66
  • ボレロ ラヴェル
    • フランスで最も人気の作曲家/68
    • 魔術と同性愛が音楽の謎を解く鍵/70
    • 深読み・裏読みが可能な単純にして深遠な曲/71

  • もっと判るミニ知識①(曲名・名曲・有名曲)/74

Chapter 2 知らず知らずのうちに誰もが耳にしている有名曲
  • ツァラトゥストラはかく語りき リヒャルト・シュトラウス
    • 映画『2001年宇宙の旅』で有名/76
    • ナチスとの微妙な関係/77
  • 美しき青きドナウ ヨハン・シュトラウス
    • CMなどのBGMでたびたび使われる超有名曲/78
    • 父は「ワルツの父」、息子は「ワルツ王」/80
  • 交響曲第五番 マーラー
    • 映画『ベニスに死す』、ドラマ『白い影』でおなじみ/82
    • 愛と再生をドラマティックに描写/83
  • ワルキューレの騎行 ワーグナー
    • 映画『地獄の黙示録』で有名に/84
    • コッポラ監督の狙いは?/86
  • (ウィリアム・テル)序曲 ロッシーニ
    • 運動会のBGMでおなじみ/87
    • 指揮者の身振りにも注目/89
  • 惑星 ホルスト
    • ヒット曲『Jupiter』の原曲/90
    • 神話と占星術がモチーフの名曲/91
  • 白鳥の湖 チャイコフスキー
    • バレエといえば、この曲/93
    • チャイコフスキーの底知れぬ才能/94
  • ツィゴイネルワイゼン サラサーテ
    • ヴァイオリンの調べといえば…/96
    • あらゆるヴァイオリニストが演奏/97

  • もっと判るミニ知識② (クラシックCDの買い方)

Chapter 3 世界中で上演されるつねに人気の名曲オペラ
  • アイーダ ヴェルディ
    • 三角関係、歴史スペクタクル、悲劇の三拍子そろった名作/102
    • ハリウッドの映画音楽にも影響/103
  • ボエーム プッチーニ
    • ヴェルディの後継者としてヒットを連発/105
    • ボエーム プッチーニ
    • ヴェルディの後継者としてヒットを連発/105
    • 現代人も共感を期待するストーリー/106
  • カルメン ビゼー
    • 知名度ナンバー1のオペラ・ヒロイン/107
    • エキゾチックで魅惑的なメロディ/108

  • もっと判るミニ知識③(オペラの観方・聴き方)/109

Chapter 4 数奇な運命の『第九』を超えようとした交響曲の傑作
  • 交響曲第九番(合唱) ベートーヴェン
    • 歌詞がわからなくても感動する名曲/112
    • 第九番は、なぜか「最後の交響曲」
  • 交響曲第一番 ブラームス
    • ベートーヴェンを超える苦しみ/116
    • 交響曲第一〇番と呼ばれた傑作/117
  • 交響曲第九番 ブルックナー
    • 未完成に終わった第九/119
    • 最後の作を予感させる荘厳な響き/120
  • 交響曲第九番 マーラー
    • 「九が最後」を意識して書かれた告別の曲/122
    • 比較して聴きたいカラヤンとバーンスタイン/124
  • 交響曲第九番 ショスタコーヴィチ
    • 共産体制下で書かれた曲/125
    • 最も謎めいた交響曲/126

  • もっと判るミニ知識④(指揮者の役割)/128

Chapter 5 知っていると鼻が高い巨匠の名演奏で知られる曲
  • 大公 ベートーヴェン
    • 最後にして最高のピアノ・トリオ/130
    • 「100万ドル・トリオ」の裏舞台/131
  • 無伴奏チェロ組曲 バッハ
    • うもれた名曲/132
    • 名演奏家は名曲を知る/133
  • ゴルトベルク変奏曲 バッハ
    • コンサートを拒否した天才ピアニスト、グールド/134
    • 眠くなるための曲の目の覚めるような演奏/136
  • トスカ プッチーニ
    • 公私ともに注目を集めた歌手カラス/138
    • カラスによるオペラ革命の真髄/139
  • オテロ ヴェルディ
    • 知られたストーリーを、誰がどう演じるか/140
    • シェイクスピア役者も脱帽のドミンゴの演技と歌/142
  • 二四のカプリース(奇想曲) パガニーニ
    • 悪魔といわれたヴァイオリニスト/143
    • 天才による天才のための曲/144
  • 展覧会の絵 ムソルグスキー
    • 時代の波に翻弄された作曲家/146
    • ピアノ版で聴くか、オーケストラ版で聴くか/147
Chapter 6 ソロの演奏が冴える華麗なるコンチェルトの名曲
  • ピアノ協奏曲第二〇番、第二一番 モーツァルト
    • 映画『アマデウス』『短くも美しく燃え』のあのメロディ/150
    • ベートーヴェンに引き継がれた『革命』/151
  • 皇帝 ベートーヴェン
    • 「皇帝」はナポレオンにあらず/152
    • ベートーヴェンの画期的試み/153
  • ピアノ協奏曲第一番 チャイコフスキー
    • (皇帝)を超えた名曲中の名曲/154
    • 名ピアニストに断られた難曲/155
  • ピアノ協奏曲第二番 ラマニノフ
    • 音楽史に残る人物の自作自演が聴ける/157
    • 怒濤のように感動が押し寄せる三〇分の演奏/158
  • ヴァイオリン協奏曲 メンデルスゾーン
    • 指揮者の役割に革命を起こす/160
    • 死後の時代を予感させる暗さ/162
  • フルートとハープのための協奏曲 モーツァルト
    • 公爵父娘のために作られた、隠れた名曲/163
    • モーツァルトらしい優雅で可憐な曲/164

  • もっと判るミニ知識⑤(キャラクタービジネスとモーツァルト)/156

Chapter 7 音楽史を楽しく彩るエピソードあふれる名曲
  • 英雄 ベートーヴェン
    • 交響曲の一大転機となった傑作/168
    • 芸術のために生きる作曲家の証/169
  • 情熱 ベートーヴェン
    • ピアニストにとっての新約聖書/170
    • 数あるピアノ・ソナタの中の名曲/171
  • 幻想交響曲 ベルリオーズ
    • 片思いの女優への求愛のための曲/172
    • 交響詩への橋渡しとなった先駆的作品/174
  • 交響詩(前奏曲) リスト
    • 交響詩の創始者の傑作/176
    • 数々の音楽家へ影響を与えたリスト/177
  • トリスタンとイゾルデ ワーグナー
    • 音楽の最終地点ともいえる傑作/178
    • 不倫の恋を活力の源に/179
  • わが祖国 スメタナ
    • 民族主義音楽の最高傑作/181
    • 日本人にもなじみやすい牧歌的メロディ/182
  • 春の祭典 ストラヴィンスキー
    • 二〇世紀の音楽で最大のスキャンダル/183
    • 時代を先取りした名曲/184
  • 清められた夜 シェーンベルク
    • 最も新しいクラシック/185
    • 愛の詩をテーマにしたドラマティックな名曲/187
  • 交響曲第五番 ショスタコーヴィチ
    • 日本では(革命)の題で有名/188
    • 革命賛歌か反体制の曲なのか、永遠の謎/189
  • マタイ受難曲 バッハ
    • クラシック最高峰の名曲/191
    • メンデルスゾーンによって一〇〇年ぶりに復活/192
  • ニーベルングの指輪 ワーグナー
    • CDなら一五枚組の四部作/194
    • 映画やドラマでおなじみの手法を創始/196
    • ワーグナーは二つの国を滅ぼした?/197
中川右介『常識として知っておきたい クラシック音楽50』KAWADE夢新書

2014-07-16

[][]イソップのはなし ΑΙΣΩΠΕΙΟΙ ΜΤΘΟΙ 16:08 はてなブックマーク - イソップのはなし ΑΙΣΩΠΕΙΟΙ ΜΤΘΟΙ - 蜀犬 日に吠ゆ

 グリム童話と混同しやすいので、将来的には整理したいです。

イソップ寓話集

目次

(第一部)
  • 一 鷲と狐 ……二一
  • 二 鷲と黒丸烏(こくまるがらす)と羊飼 ……二二
  • 三 鷲とセンチコガネ ……二三
  • 四 ナイチンゲールと鷹 ……二四
  • 五 借金のあるアテナイ人 ……二五
  • 六 山羊飼と野生の山羊 ……二六
  • 七 猫のお医者と鶏 ……二七
  • 八 造船所のイソップ ……二八
  • 九 井戸の中の狐と山羊 …二九
  • 一〇 ライオンを見た狐 ……三〇
  • 一一 笛を吹く漁師 ……三〇
  • 一二 狐と豹 ……三一
  • 一三 石を曳き上げた漁師 ……三二
  • 一四 家柄を競う狐と猿 ……三二
  • 一五 狐と葡萄 ……三三
  • 一六 猫と鶏 ……三四
  • 一七 尻尾のない狐 ……三五
  • 一八 漁師と鰊 ……三五
  • 一九 狐と茨 ……三六
  • 二〇 狐と鰐 ……三七
  • 二一 漁師と鮪 ……三七
  • 二二 狐と木樵 ……三八
  • 二三 鶏と山鶉(やまうずら) ……三九
  • 二四 腹のふくれた狐 ……三九
  • 二五 翡翠(かわせみ) ……四〇
  • 二六 水を打つ漁師 ……四一
  • 二七 狐とモルモーの面 ……四二
  • 二八 食わせ者 ……四二
  • 二九 炭屋と洗濯屋 ……四三
  • 三〇 遭難者とアテナ女神 ……四四
  • 三一 ロマンス・グレーとふたりの愛人 ……四五
  • 三二 人殺し ……四五
  • 三三 法螺吹 ……四六
  • 三四 出来ないことを約束する男 ……四七
  • 三五 人間とサテュロス ……四八
  • 三六 罰あたり ……四九
  • 三七 目の見えぬ人 ……五〇
  • 三八 農夫と狼 ……五〇
  • 三九 燕と鳥たち ……五一
  • 四〇 天文学者 ……五二
  • 四一 仔羊をあやす狐と犬 ……五二
  • 四二 農夫と息子たち ……五三
  • 四三 水を探す蛙 ……五三
  • 四四 王様を欲しがる蛙 ……五四
  • 四五 牛と車軸 ……五五
  • 四六 北風と太陽 ……五五
  • 四七 内蔵を吐く子供 ……五六
  • 四八 ナイチンゲールと蝙蝠 ……五六
  • 四九 仔牛を盗まれた牛飼とライオン ……五七
  • 五〇 鼬(いたち)とアプロディテ ……五八

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中務哲郎 訳『イソップ寓話』岩波文庫
イソップ寓話集 (岩波文庫)

イソップ寓話集 (岩波文庫)

2014-05-21

[][][]ヴェルダン条約のこと 21:27 はてなブックマーク - ヴェルダン条約のこと - 蜀犬 日に吠ゆ

ヴェルダン条約【A】Verdun 843

 カール大帝の子ルートヴィヒ1世(フランク王、位814~840)の死後、その子の3兄弟間の領地相続の条約。長子ロタールが皇帝位と中部フランク、弟ルートヴィヒ2世が東フランク、末弟シャルルが西フランク王国を相続。

『世界史B用語集』旺文社

 このときの、「中部フランク」って不思議でした。それぞれの分割後の領域は下の図参照。

 このヴェルダン条約と、その後のメルセン条約で現在のイタリア・ドイツ・フランスの領域が基本的に分割されたわけですけれども、そう考えると中部フランク王国って不思議な地域ですよね。その、ライン左岸のロートリンゲンが。

 現代の国民国家の領域を「正しい」とするつもりはありません。9世紀当時はゲルマンとローマンがごちゃごちゃ住んでいたのでしょうし。しかし結局メルセン条約で東西フランクに割譲してしまったように、ローマからでは遠くてとても支配が行き届かなかったわけでしょう? どういうつもりでこういう分割にしたのでしょうねえ。

 アルザス・ロレーヌを独仏で奪い合った経緯から見て経済先進地域であっただろうことは予想がつきますが、産業革命が到来して石炭、鉄鋼がでてからじゃなかったかとか、なんとなくイメージが漠然としております。

 そんな気持ちのまま 近藤和彦『イギリス史10講』岩波新書 を眺めていると、こんな図がありました。16世紀の状況だそうですけれども、大変参考になりました。

 みごとにロートリンゲンが人口枢軸なのですね。だから長子としてローマ皇帝の位も継いだロタールの領域になったわけですか。支配しきれるかどうかは別として、ここが「文明的な領域」だったのかもしれませんね。東西フランクは、辺境と。

 よく見ると、ルクセンブルクやリヒテンシュタインのようないわゆる「マイクロステート」もこの枢軸Axis の上にあるのですね。スイス連邦もよくみるとこの線上にあることを見るに、いままで山奥の集落という感じでしたが認識を改めなければなりませんね。もちろんチューリヒだのジュネーヴは知っていましたが、中世商業都市という感覚だとこの地域はあまりパッとしなかったように思っていたものですから。

 結論から言うと、イタリア半島の西の付け根、ジェノヴァあたりからラインラント、ベネルクスを通ってイングランドに至る地域がヨーロッパにおいては重要な地域で会ったと。それはヴェルダン条約の領土分割からも割とはっきり見て取ることができたのだなあ、ということになります。不思議どころかこの地域こそがヨーロッパだったのでした。

必修世界史B用語集

必修世界史B用語集

イギリス史10講 (岩波新書)

イギリス史10講 (岩波新書)

2014-03-23

[][][]浜本隆志『紋章が語るヨーロッパ史』白水uブックス 20:23 はてなブックマーク - 浜本隆志『紋章が語るヨーロッパ史』白水uブックス - 蜀犬 日に吠ゆ

 紋章官になりた~~い、わけではありません。

 紋章学の基礎を学ぶ上でいちばん手軽な入門書、かなあ。

第一章 紋章の起源と略史
一 紋章の起源

 ヨーロッパ紋章の直接のルーツは、およそ十二世紀頃、騎士が顔までかぶったヘルメットを着用するようになり、視界が狭まったので敵味方を確認する必要上、楯に目印になる紋様を描いたことに由来する。そのため紋章は盾の形をしているのであって、英語、ドイツ語、フランス語の紋章という言葉(coat of arms, Wappen, armoiries)が、いずれも武器(arms, Waffen, armes)から派生していることを見ても、紋章と尖塔の密接な関係が類推できよう。初期の紋章は、騎士の好みによって恣意的に描かれたケースもあったが、やがてこれが特定のものに固定化し、代々世襲されるようになる。

http://katawareboshi01.g.hatena.
第一章 紋章の起源と略史
一 紋章の起源

 紋章の起源をめぐっては、従来から諸説が唱えられてきた。まずその起源は、古代ギリシア・ローマ時代の戦闘において、楯に紋様を描いたことにまでさかのぼるという指摘がある。

(略)

 次に、ドイツの紋章学では、タキトゥス(五五ごろ―一二〇)ごろの描写にもあるように、ゲルマン人が楕円形か四角形の楯(後に円形の楯も認められる)動物紋様やルーン文字(古代のゲルマン文字)などを書き込んでいたので、これが紋章の起源であると主張された。

(略)

 さらに時代的には、第一次十字軍の遠征(一〇九六―九九)と紋章の発生の時期がほぼ重なっているので、十字軍の遠征が紋章の発生の起源であって、これがその発展に大きな役割を果たしたという説もある。則ち十字軍は、イスラム教徒が用いていた標識としての紋章に強く影響されて、この慣行を受け入れたという。

(略)

 フランスの紋章学者のM.パストゥローは、前述の紋章の起源をめぐる諸説を否定し、紋章の誕生はヨーロッパ中世の「封建社会」と「武具の変遷に起因する」としている。筆者もこの説に依拠し、紋章は中世ヨーロッパに端を発し、とりわけその継承は、封建制度の主従関係や封土の世襲制と密接なかかわりによって生まれたものであると考える。

http://katawareboshi01.g.hatena.

 というわけで、紋章の意義はとりわけ、その来歴や継承に主眼が置かれるというのが、90年代頃にはホットなテーマであったようでございます。

 モットー(標語)に関しては森護(この先生も紋章できる)が『英国王室史話』中公文庫 でちらほら書いていたような気がしますが、手元に本がないのでまたあとで。


紋章が語るヨーロッパ史 (白水uブックス)

紋章が語るヨーロッパ史 (白水uブックス)

英国王室史話〈上〉 (中公文庫)

英国王室史話〈上〉 (中公文庫)

英国王室史話〈下〉 (中公文庫)

英国王室史話〈下〉 (中公文庫)

スコットランド王国史話 (中公文庫)

スコットランド王国史話 (中公文庫)

2014-01-28

[][][][]近藤和彦『イギリス史10講』岩波新書 09:18 はてなブックマーク - 近藤和彦『イギリス史10講』岩波新書 - 蜀犬 日に吠ゆ

目次

第1講 イギリス史の始まり …… 1
  • 1 イギリス史とは
  • 2 自然環境と先史の人びと
第2項 ローマの属州から北海の王国へ …… 17
  • 1 ローマの文明
  • 2 部族国家、古英語、キリスト教
  • 3 ノルマン複合のなかのイングランド王国
第3講 海峡をまたぐ王朝 …… 41
  • 1 ノルマン征服からアンジュ朝へ
  • 2 イングランドとウェールズ、スコットランド
  • 3 百年戦争と黒死病
第4講 長い十六世紀 …… 71
  • 1 一五〇〇年ころの世界とイギリス
  • 2 主権国家と国教会
  • 3 女王の伝説、等
  • 4 大ぶりたんや国ぜめし帝王
第5講 二つの国制革命 …… 113
  • 1 論争的な十七世紀
  • 2 三王国戦争とピューリタン共和国
  • 3 王制・国教会・議会の再建
第6講 財政軍事国家と啓蒙 …… 147
  • 1 長期変動の中の十六―十八世紀
  • 2 プロテスタント連合王国の政治文化
  • 3 啓蒙、商業社会、モラル哲学
第7講 産業革命と近代世界 …… 175
  • 1 帝国と連合王国の形
  • 2 促迫された産業革命
  • 3 一八〇〇年以後のイギリスと世界
第8項 大変貌のヴィクトリア時代 …… 199
  • 1 ステイツマンは豹変する
  • 2 ヴィクトリア時代――近代の表象
  • 3 パクス・ブリタニカと「東洋の英国」
  • 4 国際問題、国内問題
第9講 帝国と大衆社会 …… 247
  • 1 世紀の転換
  • 2 「大戦争」とイギリス
  • 3 第二次世界大戦と福祉国家
第10講 現代のイギリス …… 283
  • 1 脱植民地の多幸症
  • 2 サッチャとブレア、その後のイギリス

あとがき

索引

http://katawareboshi01.g.hatena.
イギリス史10講 (岩波新書)

イギリス史10講 (岩波新書)

[][][][]西田裕希『美しすぎるロシア人コスプレイヤー』ユーラシアブックレット 東洋書店 08:29 はてなブックマーク - 西田裕希『美しすぎるロシア人コスプレイヤー』ユーラシアブックレット 東洋書店 - 蜀犬 日に吠ゆ

 ざあっと言うと、日本に比べてロシアはオタク活動のハードルが高いぶん、一歩を踏み越えてしまうと引き返せない、ようです。

 日本であれば、漫画を読み、アニメを見て興味を持ったら、近所の本屋や文房具店などでもカジュアルに人気作のグッズなどを入手できます。ロシアの場合、日本製の漫画やアニメ(グッズ展開などしているのは日本の作品が多いらしい)に興味を持っても、グッズなどを手に入れるには大都会のアニメショップまでゆかねばならず、お店の門をくぐれば、そこからはもう別世界。なのか。

 著者西田氏は日本文化イベント「ХИНОДЭ」の運営に参加するモスクワ留学生で、2014年4月に電通入社ですって。ロシアとの文化交流や、ロシアからの情報などもこれから増えるのでしょうか。