蜀犬 日に吠ゆ

2011-08-26

[][]写真はえらいことです~~澤田隆治『決定版 上方芸能列伝』ちくま文庫 20:03 はてなブックマーク - 写真はえらいことです~~澤田隆治『決定版 上方芸能列伝』ちくま文庫 - 蜀犬 日に吠ゆ

吉本興業の首領・林正之助

山口組二代目と吉本せい

 人気浪曲の広沢虎造を専属にしていた吉本興業と九州の興行師籠寅との間にトラブルが起こり、山口組の二代目山口登は吉本せいに頼まれて間に入り、そのため山口親分は浅草の浪曲事務所でズタズタに斬られるが、その直前、籠寅側が山口登と林正之助に一席もうけると申し入れてきたたのだが、正之助はさそいにのらず命拾いをしたという。

澤田隆治『決定版 上方芸能列伝』ちくま文庫

 暴力団より芸能事務所の方が怖い時代(事件は昭和十五年)もあったのよね。

 トラブルの内容は、

第二章 山口組誕生と近代やくざ

「浅草事件」と山口登の死

山口県に本拠を構える籠寅組からの要請で、虎造が日活映画への出演を勝手に承諾したことをめぐる紛争であった。

 籠寅組は、七十余りの劇場を牛耳り、のちに吉田磯吉と拮抗する代議士として活躍、勲四等まで受けた保良淺之助親分が起こした名門組織である。が、浪曲の興行では吉本興業におくれをとっていた。その吉本興業の後ろ盾としてにらみをきかせていたのが山口登だった。

 山口登は、虎造の契約違反を撤回させるべく奔走する。その解決のため、廣澤虎造のマネージャーでもあった浪花家金蔵の東京・浅草の事務所を訪ねた。いったんは籠寅側も矛を収めたかにみえる場面もあったが、その間も反撃の機会を狙っていた。浪花家の事務所で籠寅一家の手の者に急襲された登は、半死半生の深手を負う。このとき護衛役が即死している。

猪野健治『山口組概論』ちくま新書

 こわいよう(><)。

第二章 山口組誕生と近代やくざ

「浅草事件」と山口登の死

 一命を取り留めた登は、関東国粋会の仲介もあり、籠寅組と和解するが、その手打ちの儀式には関東国粋会顧問閣の陸軍大将や関東のそうそうたる親分が立ち会ったという。

 いったんは回復したものの、事件の二年後の昭和十七年夏、旅先からの帰途に倒れた登は、そのまま神戸の病院で永眠する。四一歳の若さだった。初代・春吉もこれに先立つ三八年(昭和一三年)に没している。

猪野健治『山口組概論』ちくま新書

 ズタズタに斬られて生き延びたのか、、、。

吉本興業の首領・林正之助

山口組二代目と吉本せい

 山口組三代目の田岡組長の葬儀の写真が『フォーカス』に出て、参列者の中に林正之助とおぼしき白髪の頭が写っていた。「ほかの人には判らんやろけど、これうちの会長ですわ。前から写されていたらえらいことでしたわ」と吉本のマネージャーが嘆いていたので、「会長の場合は、戦前からの歴史があるからなア」となぐさめたものだ

澤田隆治『決定版 上方芸能列伝』ちくま文庫

 えらいことですねえ。 


決定版 上方芸能列伝 (ちくま文庫)

決定版 上方芸能列伝 (ちくま文庫)

山口組概論―最強組織はなぜ成立したのか (ちくま新書)

山口組概論―最強組織はなぜ成立したのか (ちくま新書)

2011-08-24

[][][]無職~~関山和夫『落語名人伝』白水Uブックス 20:25 はてなブックマーク - 無職~~関山和夫『落語名人伝』白水Uブックス - 蜀犬 日に吠ゆ

関東の巻・近世(江戸時代)

桜川慈悲成
理くつ

 やくにたたぬむすこ、飯を喰(くら)っては二階へあがり、一日寝てばかりいるゆえ、親父大いに腹をたて

 「やいやい、せがれ、われはまあ飯を喰(くろ)うて寝てばかりおるが、そのように身を持ったらば思いやられたものじや、何か役にたつことをして銭をとることを考えてみろ」

 「わたしも銭をもうけることをこの間から考えております」

 「飯を喰っては寝、喰っては寝して、何が銭もうけになられるものだ」

 「せめて牛になって、車でも引きましょうと存じて」

関山和夫『落語名人伝』白水Uブックス

 伜の台詞って、平成でも通じそうですねえ。引用元である桜川慈悲成の『軽口噺』は(享和三年*1)ですけど、日本語ってあまり変化なかったのかしら。(親父の言葉は江戸っぽいですけどね)

落語名人伝 (白水Uブックス)

落語名人伝 (白水Uブックス)

*1:A.D.1803

2011-04-19

[][][]デマで一儲け~~関山和夫『落語名人伝』白水Uブックス 21:11 はてなブックマーク - デマで一儲け~~関山和夫『落語名人伝』白水Uブックス - 蜀犬 日に吠ゆ

 ころり渦巻く元禄年間。男たちの野望が動き出すのです。

関東の巻・近世(江戸時代)

鹿野武左衛門

 元禄六年(一六九三)の四月下旬に、江戸でソロリコロリという悪い病気が流行した。一万余人の人々が死んだという。妙な流言蜚語が江戸市中に飛び、大騒ぎとなった。そのころ、あるところの馬が人間のことばを使って「南天の実と梅干とを煎じて飲めば即効がある」といったという、とんでもないデマが飛んだ。おまけに、その由をしたためた「梅干しまじないの書」という小冊子が印刷され、その本がまた飛ぶように売れた。そして、南天の実と梅干の値段はたちまち騰貴して二十倍、三十倍にまではねあがった。人心を乱すことはなはだしかったのでついに六月十八日付で町奉行能勢出雲守から江戸市中へ触書を出して、厳重に取りしまることになった。

 いろいろ詮索した結果、その流言の犯人として神田須田町の八百屋惣右衛門と浪人の筑紫団右衛門の二人が逮捕されたが、この両人は、馬が人語を発したというのは、噺家の鹿野武左衛門が書いた『鹿野巻筆』第三「境町馬の顔見世」の咄からヒントを得て、梅干と南天の実の値上げを考え、「梅干まじないの書」を出版したことを告白した。

関山和夫『落語名人伝』白水Uブックス

関東の巻・近世(江戸時代)

鹿野武左衛門

 結局、元禄七年三月十三日に筑紫団右衛門は主犯として江戸市中引廻しの上、斬罪に処せられ、八百屋惣右衛門は従犯として流罪となった。気の毒なのは噺家の鹿野武左衛門で、彼も伊豆大島へ流されてしまった。『鹿の巻筆』の板木は焼かれ、版元の本屋弥吉も江戸追放、「梅干まじないの書」も焼却された。どうやら鹿野武左衛門は、この金もうけに一枚かんで、団右衛門らに頼まれて、南天と梅干の効能書「梅干まじないの書」を書いたらしい。そうでなければ、暗示を与えたぐらいで島流しの重罪に問われるはずがなかろう。もっとも噺家の武左衛門が、そんなに腹の悪い男とは思われないので、おそらくは八百屋惣右衛門らにおだてられて一筆書いてしまったものであろう。そう考えれば、いかにもこの人らしい無邪気な行為と受けとれる。

関山和夫『落語名人伝』白水Uブックス

 人心の乱れる時、それは悪辣な商売のチャンス。

落語名人伝 (白水Uブックス)

落語名人伝 (白水Uブックス)

2011-04-16

[][][][]子路の秘密~~関山和夫『落語名人伝』白水Uブックス 20:45 はてなブックマーク - 子路の秘密~~関山和夫『落語名人伝』白水Uブックス - 蜀犬 日に吠ゆ

 化政時代の噺家、桜川慈悲成の噺本に出てくる話。

大力

 孔子のお弟子のうち、子路というのは、気の軽き人、その上、強力にて折々孔子御退屈の節は、俵の曲持ち、大石などをかつぎて孔子に御覧にいるれば、孔子がおんよろこびあって、おもしろやおもしろやと、ふだん仰せ候まま、おもしろと名をくだされけり。子路ある日、夕ぐれに、孔子の御扶持米なるか、米四五俵を背負いて山をくだりする。あとより人二三人きたり「あれ見よ、強きものなり、ただただ俵の歩み行くようなり、ただ者にあらず、走りついて見ん」

と早足に行けども子路は重荷を事ともせず、すたすたと行くに追いつかず。

一人申しけるは

「あの者たちは、確かに孔子のお弟子、子路ならん」

と一人駈けり行きて背負いゆく俵をたたきて

「子路なるか、子路なるか」

といえば、子路ふりむきもせず

「まだ、くろ米じゃ、くろ米じゃ」

               (『延命養談数』)

関山和夫『落語名人伝』白水Uブックス

 (太字部分は原文傍点)

 笑うしかないよね。これぞ小咄、という気もします。だいたい顔淵第十二で「倦むことなかれ」、子路第十三でも同じく「倦むことなかれ」って言ってる孔子が「御退屈の節」なんかねえよ。そんでおもしろし、おもしろし、で「子路」になったなら、その前の名前は何だったんだ? 「仲由」?

 まあ、笑い話に突っ込んでもしょうがないのですけれども、これは面白い。

落語名人伝 (白水Uブックス)

落語名人伝 (白水Uブックス)

2011-01-05

[][]『相棒 劇場版2』東映 14:48 はてなブックマーク - 『相棒 劇場版2』東映 - 蜀犬 日に吠ゆ

 というわけで、『相棒』の最新映画を観てきたわけです。

相棒 劇場版II オリジナル・サウンドトラック

相棒 劇場版II オリジナル・サウンドトラック

 ネタバレは悪、だと言われると、感想が書けなくて困る。

 今回の相棒劇場版は、いろいろなものが「ない」、という印象でした。予算が「ない」のだろうなあ、というつくりからはじまり、驚きがない、右京さんの推理がない(謎解き要素がない)、コミックリリーフがない、盛り上がりがない(だからラストシーンを足したのかと邪推)、映画ならではのゴージャス感がない(第一作はビッグマラソンでイベント性を強調して、それが鼻についたのですが、今となってはなつかしい)。

 端正なつくりではありましたが、これなら新春二時間スペシャルで充分な内容だったと思います。途中でコマーシャルをはさまれても怒髪天を衝かない出来でしたねえ。

 相棒は、今シーズン(9th)も面白いし、話題になるいいドラマだと思うだけに、ハードルも高くなってしまうのかも知れませんが、今年見る唯一の映画として言わせてもらうとテレビの方が面白い、というのはやめて欲しい。(本当につまらない映画は、誰も見なかった作品ですからね。)


 じゃあつまんなかったのか、と言われるとそうではなくて、さすがに相棒だけにちゃあんと面白く仕上げているわけです。犯人の告白と右京さんとのやりとりでは泣きました! 出口でテレビカメラまわされれば「感動しました!」とか、そういうことは言えます。しかしまあ、こっちのハードルを挙げすぎたのでしょうかねえ。


[][]断頭台への行進~~ベルリオーズ『幻想交響曲』 13:23 はてなブックマーク - 断頭台への行進~~ベルリオーズ『幻想交響曲』 - 蜀犬 日に吠ゆ

 私のもっているCDはこちら。福田首相が好きだからという理由で買ったもの。

 年末、NHKで断頭台のところを聞いていて、「死の一撃」のところが弱いなあ、と思っていたのですが、CDでもそんな感じでした。私の記憶は当てになりません。

2010-09-18

[][][]橋本治『恋の花詞集』ちくま文庫 22:26 はてなブックマーク - 橋本治『恋の花詞集』ちくま文庫 - 蜀犬 日に吠ゆ

 歌謡曲。興味ありました。で、いま読み返すとそれがしみじみ分かる。

恋の花詞集―歌謡曲が輝いていた時 (ちくま文庫)

恋の花詞集―歌謡曲が輝いていた時 (ちくま文庫)

 日本の音楽のメインストリームは歌謡曲だった時代がありました。明治の西洋音楽受容の時代から西洋音楽そのものが日本に入ってくる(ビートルズですよね、橋本先生は言わないけど)まで、日本の音楽は「歌謡曲」を牽引車にしていたのです。

 橋本治の音楽観は私とはだいぶ遠いところにあるので、私は「色恋沙汰」を歌謡曲とは認めがたいで「艶歌」に分類したいのですが、日本は上古以来芸術といえば色恋沙汰ばかりであったとする橋本治に反対したいところであります。そういうことを言い出したらきりがないのではありますが。戦後のロシア歌謡も詳しくないし、「インターナショナル」を歌えず「抜刀隊」大好きなサヨクって、私も私でデタラメなので価値観の違いぐらいはどうでもいい。


 で、橋本氏があとがきでいうに、歌謡曲のCDは通信販売が充実しとる、と。これはけっこう大切な情報ですよ。書籍にしてもCDにしても、田舎の人間にはいろいろ不満がありますからね。著作権に敬意を払いたくてもそれができない人もいるんです。