蜀犬 日に吠ゆ

2012-10-22

[][][][][]池田邦彦『シャーロッキアン!』23 双葉社 22:10 はてなブックマーク - 池田邦彦『シャーロッキアン!』23 双葉社 - 蜀犬 日に吠ゆ

 読み返しまして見直しました。前言撤回。

シャーロッキアン!(2) (アクションコミックス)

シャーロッキアン!(2) (アクションコミックス)

シャーロッキアン!(3) (アクションコミックス)

シャーロッキアン!(3) (アクションコミックス)

 「ファンダメンタリスト」と「リアリスト」の相克というのはかなり奥が深いのではないかと思い直しました。キリスト教とは違ってあくまでもシャレで逃げられる分、深い考察がフィクションとノンフィクション、理想と現実に反映できるテーマなのですね。

2012-08-22

[][][][]春日ゆら『先生と僕』2 メディアファクトリー 20:58 はてなブックマーク - 春日ゆら『先生と僕』2 メディアファクトリー - 蜀犬 日に吠ゆ

 夏目漱石おもしろエピソード4コマ。1巻は単発ネタの羅列でしたが、 2巻は時系列に沿って「熊本五高~朝日新聞入社」まで。

 

 ですから、トピックとしては「俳句はじめ」「夏目狂セリ」「子規、死す」「ラフカディオ・ハーン更迭」「猫伝」「坊っちゃん」「倫敦塔」「朝日移籍」といったところ。

 しかし、歴史上の人物うんちくもので、フィクションはどの程度混ぜてよいのか悪いのでしょうか。



 とりあえず、シェークスピア研究家のクレイグ先生に個人教授を申し込みに行きます。下宿はベーカー街の近くだったようです。

先生とベーカー街

ベーカー街といえば

 ベーカー街221Bに住む名探偵といえばシャーロック・ホームズ。ホームズは架空の人物ではありますが、同時代同場所に通っていたなら会っていてもおかしくない! と、ホームズと共演しているパスティーシュ作品もいくつか存在しています*1

春日ゆら『先生と僕』2 メディアファクトリー

 夏目漱石の英国留学は1900~1902年。これがまた例によってシャーロキアン(セカンド・ストーリテラー)にとっては垂涎の時期ではあるわけです。

第二十二章 多忙な日々

「一八九四年から一九〇一年まで、シャーロックホームズは非常に多忙であった。この八年間に、警察がとり扱った難しい事件の中で、ホームズが相談を受けなかったものはないと言ってもよい程だった。」

W・S・ベアリング・グールド著小林司・東山あかね訳『シャーロック・ホームズ ガス灯に浮かぶその生涯』河出文庫

第二十二章 多忙な日々

「ほかにもまだ、興味がある事件やたいして面白くもない事件があるが、あまりたくさん発表しすぎると、かえって、私の尊敬してやまないひとの評判に逆効果を与えることになっては何にもならないので発表しなかったのである。」

W・S・ベアリング・グールド著小林司・東山あかね訳『シャーロック・ホームズ ガス灯に浮かぶその生涯』河出文庫

 まーグ-ルドはじめ泰西の人たちにはほとんど相手にされていないのですけどね。千円札(D号券:1984~2007年発行)にしても、よそには通じまい。


 ついでに言うと南方熊楠と孫文がオクスフォードで交友を始めたのが一八九七年なので、一八八八年に突然滅びた町「ウィンド・ナイト・ロッツ」に民俗調査に行ってもいいのよ? (「奇妙な」ことに、「切り裂きジャック」が犯行をやめて姿を消した年でもあります。)


 新聞報道、鴎外の千駄木の家(樋口一葉)、ベストセラー作家になってからのマスコミとの戦い(『坊っちゃん』の黒板の元ネタ)、ピン助とキシャゴの派閥と狩野亨吉派の抗争(『坊っちゃん』は狩野派)。このころが一番おもしろいので、ネタはまだまだある! これからもどんどん面白くなる!!



シャーロッキアン!(1) (アクションコミックス)

シャーロッキアン!(1) (アクションコミックス)

*1:山田風太郎『黄色い下宿人』あたりが有名? 未読です。(引用者)

2012-08-20

[][][][][]池田邦彦『シャーロッキアン!』23 双葉社 20:35 はてなブックマーク - 池田邦彦『シャーロッキアン!』23 双葉社 - 蜀犬 日に吠ゆ

 しばらくご無沙汰していました。2巻と3巻、入手。

シャーロッキアン!(2) (アクションコミックス)

シャーロッキアン!(2) (アクションコミックス)

シャーロッキアン!(3) (アクションコミックス)

シャーロッキアン!(3) (アクションコミックス)

 「バリツ」は「バーティツ」説は初めて知りました。

 2巻で遂に車先生のライバルが登場。「ホームズ物語を すべて事実とみなす シャーロッキアンの 一派」である「ファンダメンタリスト」に対する「リアリスト」、ヒロシ(洋)君登場。恋のさや当てが始まります。(3巻の帯(ハカマ)に「どこから読んでも楽しめる」とありますが、こうなってしまうとそれは無理が出てきてしまうと思います。)


 ネタ切れなどだとは思いますが、キャラクタの使い回しやネタの無理矢理感が目立ちます。『シャーロッキアン!』が大好きな「シャーロッキアニアン!」ならいろいろ理屈をこねるのでしょうけれども、それほどでもないのでツッコミたい気持ちがまさってしまいます。暴漢に殴られたとき、犬のことを言いたければ「シルバー……」ではなく「銀星号!」 でしょう? 村野さんは英語版を読んだのでしょうか?*1漫画に対しては、私リアリストなのでしょうか。

 そして3巻はまるまる車先生とアイリーンがよりを戻す話。ホームズネタは本筋の補助線になってしまいました。漫画としては面白いのですが、はじめに期待してたのと違う展開なので困ります。


 もともと、「現実の事件に対してホームズ物との接点を見つけ出してそれを手がかりに謎を解いていく」ところが魅力の漫画だったのだと思いますが、次第に「ホームズ物そっくりの事件が起きてそれをネタにホームズうんちくを披露する」エピソードが幅をきかせてきてしまいました。それがあからさまですと、こっちはげんなりするのですよね。ホームズうんちくは面白いですけど。なんというか、複雑。

*1:最近の翻訳はみんな『シルバー・ブレイズ事件』とか西洋かぶれのタイトルをつけていて、まったく感心できません。

2011-05-05

[][][][][]池田邦彦『シャーロッキアン!』1 双葉社 21:13 はてなブックマーク - 池田邦彦『シャーロッキアン!』1 双葉社 - 蜀犬 日に吠ゆ

 『シャーロッキアン! 』このタイトルはずるいよね。他の人がこれで書けなくなってしまうではないですか。シャーロッキアン、は個別の案件ではなくて「ジャンル」です。です! です!!!!!!!! はあはあ、つい興奮しましたが、この漫画はおもろい。

シャーロッキアン!(1) (アクションコミックス)

シャーロッキアン!(1) (アクションコミックス)

 Sherlockian は、手元の英和辞書では「シャーロック・ホームズの熱狂的ファン、シャーロッキアン」です。わたしが「ドラえもん学コロキアム」に忠誠を誓いたがるのは、ドイルとFを同じくらい愛しているからです。あーでも、ドイルはそれほどでもない。

 『シャーロッキアン!』は、エル文化大学にかよう原田愛理(ちょっと推理小説好き)が、論理学の車路久(くるまみちひさ)教授(もちろんシャーロキアン)とイチャイチャしてるうちにみんなが幸せになる、いわゆる『美味しんぼ』型の漫画。(「美味しんぼ型」もジャンルとして語るべきだと思うんですけど、そういう人が現れないのは、定義が難しいからでしょう。料理に限るのか、「専門知識を生かして全然関係ない人を幸せにする話」の範囲を限定できるのかわかりません。)

 しかしまあ、ようするにホームズものをなぞった事件が愛理ちゃんのまわりにおきて、解決するんです。泣いた。


 で、私はグールド宗で、それが負い目でシャーロキアンにあこがれるだけだったのですが、ジャックがジョーンズで、みんなに受け入れられる愛理ちゃんがうらやましかった。レストレードなんて気にも留めていなかった。


 「初歩だよ、ワトスン君」はカノンにないんです。グールドの「ほんの初歩さ、ホームズ」はネタ。うきぃ。

 どれだけ続けられるか注目。一話20数頁。三巻でカノンの60話を超えてしまう。どんなにホームズが好きでも、ワトスン君をこえたら冒涜になるからなあ。

 しかし、こんな漫画が成り立つのだから、僕たちは大丈夫ですよね!

 アドラーに、乾杯!!!


 (しかし、タカヒムスヒノテヅカノオサムシノミコトの、「写楽保介あんど和登サン」のほうが、語呂としては完全にうえだよなあ。ヒュウルンルンヒュウウルンルン、キソウテンガイ)

2009-09-20

なんでひとりに

[][][]コナン・ドイル 延原謙訳『ドイル傑作集』3 恐怖編 新潮文庫 15:41 はてなブックマーク - コナン・ドイル 延原謙訳『ドイル傑作集』3 恐怖編 新潮文庫 - 蜀犬 日に吠ゆ

 恐怖ものというジャンルは、すこしニガテ(S-N)。読むと怖くて眠れなくなる、とかいうのではなくて単純に何が怖いのか分かりません。人が死んだり、血しぶきが飛び散ったり(splatter)するのは読むのがつらいのですが、それは恐怖ではなくて嫌悪感でしょう。それと恐怖は同じだと言われるとなんともいえませんが。

 ドイル先生の「恐怖もの」は、冒険ものでもあるので、そういう点から読めば面白い。こういうアクション風のなかに恐怖シーンが混じっているのは好きです。「どうしてそこでひとりになるの!」とか、「いっぺん、警察呼ぼうよ!」とかいうたぐいの。

  • 大空の恐怖 The Horror of the Heights
    • ジョイス・アームストロング氏は3万フィートの高みをめざして飛行機を飛ばす。
      • ポール・ヴェロナの単葉機。「ほんとうに何かしようというのには、単葉機ほどすぐれたものはない。これは初期時代すでにボーモンの発見している通りだ。」
      • 「エンジンは十気筒、ローバー回転式で、最大百七十五馬力まで出せる。新しい改良はすべて採用してあった――密閉型胴体、強く曲った着陸用ソリ、ブレーキ、回転式安定器、ヴェネチアン・ブラインド式に翼の仰角を変えることにより三段変速ができる装置など」
    • 目的は、記録への挑戦(だけ)ではなくて怪異(モンスターズ)の究明。
      • 猟銃、酸素袋、防寒具、雲母(タルク)の眼鏡(ゴーグル)を準備して出発。
    • 一度目の遭遇がバインダー式のノートブックに記録される。
      • 四万三千フィート。
        • これは想像以上。科学的にはもちろん出鱈目でしょうが(たとえば生態系が成り立たない)、嘘っぱちのリアリティがあります。上空へ上がっていく描写はすこしだらだらしますが、そうして次第に読者を異世界に引っ張り込むわけですね。
    • 二度目の挑戦が行われる。
      • ノートブックが発見されるのは話の冒頭なので、結果はある程度予測できる仕組みになっています。
        • 恐怖というより冒険ものですね。
  • 革の漏斗 The Leather Funnnel
    • 友人のライオネル・デーカーは怪奇骨董が趣味。
    • 古代の遺品を枕元に於いて寝ると、その物品に込められた怨念を夢に見るという。それを革の漏斗で実験。
      • 革の漏斗は正義を実行する道具。
        • 嫌な話。悪趣味。オールド・ワールド的。
  • 新しい地下墓地 The New Catacomb
    • 友達のビュルガー君とは古代ローマ遺跡発掘のよきライバル。
      • ビュルガー君は最近新しいカタコンベを発見して貴重な財宝を掘りだしている。
        • 前作と似たような設定ですな。
    • 主人公ケネディはその地下墓地を自分にも内緒で教えてくれと頼む。
      • ビュルガー君は、「じゃあ、お前このまえスキャンダルになってたあの娘と、実際どうだったのか教えてくれよ。」
        • 中学生が修学旅行でするような会話。しかしこれでオチは読めてしまいました。「藤子A ブラックユーモア」読者であればよくある話。
      • まあまあとにかく地下墓地へと。
        • ちょっとご都合主義でしょうか。
  • サノクス令夫人 The Case of Lady Sannox
    • ダグラス・ストーンとサノクス令夫人は目下不倫中。
      • サノクス卿の心中やいかに?
        • ……って、もうオチが見えてしまいましたよ。「サラダ満賀」なめんなよ、というか前作と同じオチでいいのでしょうか、新潮文庫の編集は。
  • 青の洞窟の怪 The Terror of Blue John Gap
    • ダービー州のアラートン農場のそばにはムラサキホタル石の採れる鍾乳洞があり、古代ローマ時代の採掘坑が残されています。
      • 最近、洞窟の奥からうなり声が聞こえるようになり、夜中に農場で羊が何ものかに虐殺されます。
        • これが横溝先生だったら横溝先生的展開になるのでしょうけれども、ドイル先生なのでドイル先生的展開になります。
        • ということで、人類は勝てるのか? という冒険ものになるわけ。
        • 「The Horror of -」と「The Terror of -」の違いは正直分かりません。ラテン語源からいうとHorrorは「(恐怖で)毛が逆立つこと」、Terrorは「えるような恐怖」から来ているそうですが、なぜかHorrorには「the horrors」で「(アルコール中毒の)え」という訳があります。
      • シートン氏の謎。「調べてみたがこのシートンなる人物が何ものであるのか、ついに分からなかった。」
        • あの、シートン先生じゃないのでしょうか。どうぶつ記の。シートン先生は19世紀後半から20世紀前半でコナンドイルと活躍の時期が重なりますし。一方はアメリカ、かたやイギリスですが、調べれば分かりそうなものです。わざわざ分からなかったと書くのでしょうから、あのシートン先生ではないということなのでしょうね。
  • ブラジル猫 The Brazilian Cat
    • 名家の出身でありながら借金に追われるマーシャル君は、ブラジルから帰ってきて羽振りのいい従兄弟エヴァラード・キングの誘いでその領地グレイランズを訪ねます。
      • サフォーク州。クリプトン・オン・ザ・マーシュの近く。イプスウィッチから支線に乗り換え。
        • 田舎→ダートムア→まだらの紐
      • エヴァラードはブラジルからいろんな動物を持ち帰って飼っており、なかでも自慢はブラジル猫。
        • 外国帰り→猛獣→まだらの紐
    • エヴァラードの夫人は主人公を追い返そうとします。
    • ブラジル猫は、ジャガーほどもある巨大な肉食獣。
      • 屋敷の離れの特別な部屋に飼われています。
        • ほらやっぱりまだらの紐。

2009-08-09

蔡倫

[][][]コナン・ドイル 延原謙訳『ドイル傑作集』2 海洋奇談編 新潮文庫 00:09 はてなブックマーク - コナン・ドイル 延原謙訳『ドイル傑作集』2 海洋奇談編 新潮文庫 - 蜀犬 日に吠ゆ

 オビ(orハカマ)の「港を出たら、そこは密室。」というキャッチコピーがいかにもな雰囲気を出していますが、中身に一つも密室物がない!

ドイル傑作集(2)海洋奇談編 (新潮文庫)

ドイル傑作集(2)海洋奇談編 (新潮文庫)

 北極海の氷原を走り回り、アフリカ西海岸の密林に上陸したり、×××を××したり。全然閉ざされていない。

  • 縞のある衣類箱 The Striped Chest
    • 公海上で無人船に遭遇。難破でも、争いでもなく無人になった船にはドン・ラミレス・ディ・レイラの宝箱が。
      • 星新一かっつーの。
      • しかし、無人船に大きな宝箱といえば、私の世代だともうD.I.O様なんですよね。なのでアラダイス君の推理は飛躍でもなんでもなく、当然ありうると思ってしまいました。
  • ポールスター号船長 The Captain of the "Polestar"
    • 北極海で氷に水路を閉ざされたポールスター号と、船長の生き様。
      • 読みようによっては、妖怪にとりつかれたという話にもなりますね。
  • たる工場の怪 The Friend of the Cooperage
    • たる工場で次々と起こる殺人事件。従業員たちは悪魔の仕業と信じているが…
      • 必ず複数で行動するようにすればいいのに。ミステリの人たちは、一人が好きすぎます。事件が起こってからも。
    • 「これでロマンスもありますよ」
      • いや、ないだろう。
    • コショー鍋。
      • ドイル先生は、あまり料理を描写しない?
  • ジェランドの航海 jelland's Voyage
    • 1860年代の半ば。ヨコハマ商館での事件。
      • 幕末ですか。日本の話は後述。
    • マキヴォイ死亡。ジェランド死亡。
      • なんで?
  • J・ハバクク・ジェフスンの遺書 J.Habakuk Jephson's Statement
    • ドイル先生がマリー・セレスト号(名前は変えてある)の謎に挑む!
      • そういえばグールド氏の伝記ではホームズが切り裂きジャックを逮捕してましたなあ。そういうのはいいのでしょうか。
    • マリー・セレスト号に謎の乗客が割ってはいる。
      • 「南部の紳士」の伏線は?
    • マーサから黒い石を受けとる。
      • この伏線はうまいですねえ。完全に逆方向に誘導されました。
    • 航海中の日誌
      • これもうまい。だらだらした日常をだらだら記述することでけだるいムードが出ています。もっとも、けだるすぎて読むのを挫折しかかりましたが。
    • ゴアリングの野望の王国
      • コンスタンティノープル(第二のローマ)がアフリカに! スケールが大きすぎるわりに、リアリティが…
  • あの四角い小箱 That Little Square Box
    • スパルタン号に謎の乗客が割ってはいる。
      • 入りますか。
    • 小箱には、スプリングとシャッターとがついている。
    • 港を出たら、密室か?
      • やられた。あのオビのキャッチコピーは、ミスリーディングさせる罠だったわけですな。

「ジェランドの航海」における日本の描写。

 六〇年代*1の半ばといえば、遠く日本では物情騒然としていた。これはシモノセキ砲撃事件*2のあとのことで、大名事件よりは前だった。当時現地人のあいだでは「トーリイ党」*3と「自由党」とが対立しており、争いの中心点はすべての西欧人の喉を切ってしまうか否かにかかっていた。

コナン・ドイル『ドイル傑作集』2 新潮文庫

 シモノセキ砲撃事件を、延原先生は1864年としています。これは、幕府が行った第一次長州征伐に呼応して、イギリス公使オールコックが英仏米蘭の連合艦隊でシモノセキを砲撃し占拠した、いわゆる「四国艦隊下関砲撃事件」のことを指しているのでしょうね。しかし、ならばなぜ、「大名事件」には注がないのでしょう。

 私はここで、別な解釈の可能性を考え、ここに披瀝するものであります。

  1. シモノセキ砲撃事件
    1. 四国艦隊下関砲撃事件のことではない。
      1. 四国艦隊下関砲撃事件であるなら、列強の戦果は砲撃にとどまらず占拠に至ったのですから、シモノセキ攻略戦争とかなんとかいいそうなものです。日本側はボロ負けしていて悔しいから「事件」と呼びますが、あちらさんがそう呼ぶかは疑問。
    2. これは1963年5月の、長州藩外国船砲撃事件のことであると考えると、その点スッキリ。
  2. 大名事件
    1. これは1863年7月の薩英戦争のことか。
      1. 他にイギリスと事件を起こした大名が思い浮かばないからなのですが。
        1. ヒュースケンを薩摩浪士が惨殺(1860)
        2. 東禅寺のイギリス仮公使館を水戸浪士が襲撃(1861)
        3. 品川のイギリス公使館を高杉晋作、久坂玄瑞が焼き打ち(1862)
        4. どれも大名とは関係なさそう。(ヒュースケンはアメリカに雇われたオランダ人なので無関係か。)
      2. 生麦事件は1862年なので惜しくも長州藩砲撃事件より先。しかし、生麦から薩英戦争を一連の「大名事件」とした可能性も。
    2. シモノセキの逆で、薩摩藩と戦争して鹿児島城下を焼き払ったわけですが、勝利にまでは到達できなかったため事件扱いにしたのではないでしょうか。

 さらに、「トーリイ党」と「自由党」

  1. 「日本トーリイ党」を日本語に訳せるか?
    1. 「トーリイ」だけなら「アイルランドの追い剥ぎ」だから簡単ですが、大八島にアイルランドは含まれていませんからねえ。
      1. ちなみにライバルのホイッグは「スコットランドの裏切り者」。
    2. ここで難しいのは、イギリスは、そしてドイル先生は1860年代の日本の支配者、つまり王は誰であると認識していたのか、ということ。
      1. タイクーン(tycoon 大君)が徳川将軍を意味するわけで。
        1. 今思ったのですが、tycoon って、typhoon とかtyranto とかと近い言葉なのですね。
    3. ですから、単純に「王党派」=「尊皇派」ではないのでしょう。
    4. じゃあ「佐幕」なのかと言われても困ります。「争いの中心点はすべての西欧人の喉を切ってしまうか否かにかかっていた」というのは、「攘夷」「開国」の対立ですから。
    5. ひょっとして、「イギリス王家を認める」=「トーリイ」なのでしょうか。つまり「開国派」? しかし、日本人にそういう意識の人、いないと思います。しかもトーリイの立場というのは、スコットランド系カトリックのジェームズ2世を容認するものであって、幕末にそんなことで悩む日本人を、想像できません。
    6. 幕府は開国か、と言われると、実際には開国後も長州の外国船砲撃を認めたり(というか無二念打払令があるので原則的には攘夷)しています。どっちつかずなんですよね。
    7. じゃあ「王党派」=「尊皇」?
      1. 尊皇派にしても、「尊皇攘夷」のグループに「倒幕開国」とか「倒幕攘夷」の輩だってたくさん混じっているわけですからまあ王党というわけでもないし、西洋人の首を切るかどうかは人それぞれですよねえ。

 というわけで答え合わせ

しかし、局外者には現地の事情は分かりっこないのだ。もし反対派が勝てば、その間の実情を教えてくれるのは新聞記者じゃなくて、立派な王党が鎖かたびらを着こんで、おのおの大刀を片手に君のところへ現われ、一刀のもとにすべてを知らせてくれるのだ。

コナン・ドイル『ドイル傑作集』2 新潮文庫

 というわけで、「トーリイ」は「攘夷」だということが分かりました。しかし、それでいいのか。

*1:訳注 一八六〇年代のこと。ちなみに明治元年は一八六八年にあたる

*2:訳注 一八六四年

*3:訳注 イギリスの王党のこと