蜀犬 日に吠ゆ

2019-01-03

[][]E・O・ライシャワー/田村完誓『円仁 唐代中国への旅』入唐求法巡礼行記の研究 講談社学術文庫 14:45 はてなブックマーク - E・O・ライシャワー/田村完誓『円仁 唐代中国への旅』入唐求法巡礼行記の研究 講談社学術文庫 - 蜀犬 日に吠ゆ

円仁 唐代中国への旅 (講談社学術文庫)

円仁 唐代中国への旅 (講談社学術文庫)

 結構ページ数の多い本を並行して読んでいるので、内容が全然入ってきません。この本もようやくページをめくり終えましたが、また読みなおさなければ。

 ところで、ジャケット(カバー)裏に、「世界三大旅行記の一つともされる」とあったので、また日本独自基準だな、と思い、後の二つは「アレ」と「アレ」だね。と早とちりしてしまいました。1963年だと、あっちは落選するのかあ?

 私は、マルコ・ポーロ『世界の記述(東方見聞録)』、イブン・バットゥータ『三大陸周遊記』だと思っていたのですが、本文の第一章「円仁の日記」で、紀行文の話があり、

 マルコ・ポーロと円仁

 旅行家としてのマルコ・ポーロの名声は、世界中にとどろいているが、慈覚大師円仁の名前は、彼の故国日本でさえも、わずかに学者の間に知られているに過ぎない。

E・O・ライシャワー/田村完誓『円仁 唐代中国への旅』入唐求法巡礼行記の研究 講談社学術文庫

 玄奘・円珍と成尋

 マルコ・ポーロの有名な旅行記は、円仁の日記と並ぶ第一級のものであることは確かだが、実をいえば、内容や時間においてもっと手近な他の(人々の)業績がある。

 これらの最もよく知られたものの一つは、偉大な中国僧で旅行家である玄奘の書いた『西域記』である。

(略)

 円仁の仕事に最も近いものは、日本僧円珍の書いた『行歴抄(ぎょうりゃくしょう)』である。円珍は円仁と同時代の天台宗における後輩であり、よきライバル(競争相手)であった。天台宗は当時の日本の仏教を代表するグループであった。

(略)

 ところで、日記作家としては、円珍は一段と落ちる。円仁の記録は実質的にその全体が保存されていると思われるが、円珍の『行歴抄』は断片が残っているのに過ぎないのである。これらの断片は興味ある多くの記事を含み、例えば、彼の中国旅行中見聞した円仁と二人の日本人同行者とのその後の行動についての情報もあるが、ほんの部分的なものでしかない。しかるに、後代の歴史のなかでは、円仁はマルコ・ポーロや玄奘と肩を並べる人物として登場するのである。

E・O・ライシャワー/田村完誓『円仁 唐代中国への旅』入唐求法巡礼行記の研究 講談社学術文庫

 ということでした。ので、世界三大旅行記は(ライシャワー先生は別に言ってないけど)『世界の記述』『大唐西域記』『入唐求法巡礼行記』、でした。


 以下目次。

ライシャワー/田村完誓『円仁 唐代中国への旅』講談社学術文庫>

  • 日本語版への序文 …… 9
  • まえがき 中村元 …… 11
  • 原版の序文  …… 15
  • 凡例 …… 30
  • 第一章 円仁の日記 …… 33
    • マルコ・ポーロと円仁 36
    • 九世紀の中国 39
    • 玄奘・円珍と成尋 46
    • 円仁の日記の現状 50
    • テキストの伝承 55
  • 第二章 円仁――巡礼と師父 …… 63
    • 新参者 63
      • 初期の日本歴史のすぐれた仏教僧侶の多くは、首都に近い地方の貴族の子孫である場合が普通であったが、円仁はただ一人例外であり、東日本、下野国(しもつけのくに)都賀郡(つがごおり)の名も知れぬ家に生まれた。当時、下野は、大和民族とその地方の先住民アイヌ族との境界線からほど遠からぬ辺鄙なところであった。彼の家族は壬生氏を名乗り、日本の第十代の天皇と伝えられている崇神天皇の皇裔であると主張した。しかしながら、誰しもが系図を誇る習慣のある国では、そのような主張はあまり真面目に受け取らなくてもよかろう。
    • 中国渡航 66
    • 巡礼 71
    • 弾圧 74
    • 教会の父 77
    • 円仁 ―― 生いたちと人柄 81
  • 第三章 遣唐使 …… 90
    • 上代の極東における国際関係 91
    • 遣唐使・遣隋使 94
    • 遣唐使の構成 100
    • 準備 104
    • 渡航第一回の試み 114
    • 渡航第二回の試み 119
    • 渡航第三回の準備 120
    • 渡航 124
    • 揚州への運河の旅 129
    • 揚州における遣唐使の一行 132
    • 拝謁 137
    • 貿易と商業 140
    • 帰国の準備 142
    • 荒海にて 146
    • 山東の沿岸を離れて 150
    • 帰国の航海 156
    • 帰朝の歓迎 160
  • 第四章 円仁と中国官吏 …… 171
    • 県庁よりの尋問 172
    • 通行証の申請 177
    • 県庁にて 183
    • 州庁にて 185
    • 勅書 189
    • 都督府にて 192
    • 途中 195
    • 長安(都)にて 199
  • 第五章 唐における生活 ……203
    • 大衆的な祭礼 203
    • 国家の儀礼 212
    • 禁忌・神話と不吉な前兆 217
    • 途上の糧食・宿泊 228
    • 僧院と旅僧 236
    • 経済地理的観察 241
    • 僧への官給 246
    • 円仁の費用の出所 249
  • 第六章 大衆の仏教 …… 261
    • 寺院の施設 263
    • 国家的教会 267
    • 宗派の分立 273
    • 精進料理 279
    • 宗教講義 286
    • 儀礼と祭祀 291
    • 神話と奇蹟 296
    • 五台山と文殊菩薩の信仰 300
    • 五台山の僧院 306
    • 五つの峯 314
    • 巡礼と後援者 318
    • 仏教の盛行と衰退 324
  • 第七章 仏教弾圧 …… 355
    • 反仏教的感情 336
    • 韓愈の覚え書き 341
    • 官の記録 346
    • 激化する嵐 351
    • 宮中の密謀 356
    • 最初の打撃 364
    • 皇帝と道教 372
    • 不死の峯 377
    • 弾圧の徹底 385
    • 円仁の追放 390
    • 再び途上にて 396
    • 州庁の迫害 404

  • 第八章 中国における朝鮮人 …… 414
    • 新羅国 414
    • 朝鮮人と世界貿易 416
    • 宮中の朝鮮人 421
    • 沿岸の貿易商 427
    • 張宝高 435
  • 第九章 帰朝 …… 449
    • 訳者あとがき …… 459
    • 年表 …… 481
    • 索引 …… 529
E・O・ライシャワー/田村完誓『円仁 唐代中国への旅』入唐求法巡礼行記の研究 講談社学術文庫

2017-01-14

[][]久遠の法、ブッダの授記~~『ほんとうの法華経』筑摩新書 21:14 はてなブックマーク - 久遠の法、ブッダの授記~~『ほんとうの法華経』筑摩新書 - 蜀犬 日に吠ゆ

 南無。

 法華経の岩波文庫に『サンスクリット原典現代語訳 法華経』が出版された記念の対談。

 同じ岩波文庫で出されている『法華経』は旧版ということになるのでしょうか?

 法華経は、とりあえず、ざっと目を通したことはありますが読んだというには程遠い、内容もまったく頭に入っていない状態であったため、こうした入門書はありがたいことでございます。南無。

 大乗仏教は、小乗を否定するのではなくてそれを包含しようとしていたこと、法華経の断章が記述された時は、仏教といえばのちの上座部仏教であり、法華経集団はそれに配慮しながら経典を捏造してゆく(とは書いていませんが)あたりの話はずいぶんためになりました。

 提婆達多(ダイバダッタ、デーヴァダッタ)は、キリスト教でいえばイスカリオテのユダに匹敵する人物ですが、新約聖書には採られなかった(裏切り者のユダを使徒とする)「ユダによる福音書」がありますように、デーヴァダッタ仏教団が存在したというのは興味深く感じました。法顕や玄奘が記しているそうで、ということは第3回、第4回の有名な仏典結集をくぐり抜けているということで、インドの仏教界やヒンドゥーとも同時代に、どのような形で存続していたのか、興味を持ちました。ブッダに公然と反抗したデーヴァダッタを、法華経では「未来において授記する(現世では授記しない)が未来に救われる」としているわけで、法顕や玄奘がどのような判断をしているのか、『仏国記』『大唐西域記』を読まないといけないのかなあ。


ほんとうの法華経 目次
The Lotus Sutra in the True Sence
  • まえがき 橋爪大三郎 013
  • 序 015
  • 法華経の基礎知識 017
    • 法華経はなぜ、「最高の経典」か
    • 経典全体の中での法華経
    • 釈尊を「神格化」
    • 法華経の評価
    • 経典とはなにか
    • 梵天勧請
    • 釈尊は字が書けたか
    • なぜ口伝なのか
    • 如是我聞
    • ハディースと仏典
    • 小乗と大乗
    • 大乗仏教の始まり
    • 法華経のサンスクリット原典
    • 貝葉の写本
    • 写本の発見
    • ケルン・南条本
    • 鳩摩羅什訳
    • 原典を参照する利点
    • 漢訳とサンスクリット
    • これまでの法華経役
  • 法華経の構成 049
    • 会座とはなにか
    • 一二五〇人の弟子
    • そのほかの聴衆
    • 男女の別
    • ほかのブッダ
    • 菩薩たち
    • 会座の転換
    • 教えはいつ説かれた
    • 不在の弟子
    • おもな菩薩たち
    • 弥勒菩薩
    • 章の構成
    • 口伝か文字か
    • 迹門と本門
    • 会座による区分
    • それ以外の区分
  • 第一章 序品(第一) 078
    • 瞑想中の天上の花と大地の
    • 無数の仏国土を照らす
    • 何の前触れか
    • 奇蹟と神通力
    • 行き過ぎた布施
    • 文字通り信じるのか
    • ミリンダ王の疑問
    • 二つの法華経
    • 差別思想と大乗経典
    • 宗派の関係
  • 第二章 方便品(第二) 094
    • 方便品とは
    • 過去世
    • 因と縁
    • 声聞と菩薩
    • 方便
    • さまざまな経典
    • 法華経を超える立場?
    • 密教はどう危険か
    • 日本仏教にからみつく密教
    • 十如是
    • 声聞も菩薩である
    • 掛詞としての「菩薩のための教え」
    • 二乗と”真の菩薩”
  • 第三章 譬喩品(第三) 123
    • 授記
    • 授記の起こり
    • 授記という形式の方便
    • 今”””ここで””このわが身”で
    • 声聞が授記を受ける
    • 火宅の譬え
    • 三一権実論争
    • 玩具の車と本物の車
  • 第四章 信解品(第四) 138
    • 信解とは
    • 四人の声聞たち
    • 資産家の貧しい息子
    • 四人の声聞への授記
    • 利子について
    • 聖書の放蕩息子
    • 長者窮子のパワー
    • 大乗教団はどこから
    • 菩薩の再定義
    • 声聞の修行と菩薩の修行
  • ”真の声聞”は菩薩
    • なぜはじめから菩薩なのか
    • 仏の子と神の子

--

  • 第五章 薬草喩品(第五) 168
    • 薬草の譬え
    • 聖書のたとえと、法華経の譬え
    • 世間の意味すること
  • 第六章 授記品(第六) 174
    • 四大声聞
    • 劫について
    • 仏国土は平坦
    • 仏国土はどんな場所か
    • 仏国土の構造
    • 仏国土と極楽浄土
    • 授記の革新性
    • 授記と仏国土
    • ブッダが菩薩行をする
  • 第七章 化城喩品(第七) 193
    • 大通智勝仏
    • 巨大な数
    • 大通智勝仏と法華経
    • 大ブラフマー神
    • アスラたち
    • 現在他方仏
    • 釈迦仏が中心
    • 釈尊と仏国土
    • 蜃気楼の譬え
    • 一神教との違い
    • 絶対者は神か、人間か
    • 殺生について
  • 第八章 五百弟子授記品(第八) 216
    • 衣裏珠の譬え
  • 第九章 授学無学人記品
    • 法を語ることが重要
    • 声聞と法華経信者との争い
    • 女性のいない仏国土
    • 無量の三千大千世界
    • 同じ名前のブッダ
  • 第十章 法師品(第十) 229
    • 善男子・善女人
    • 経巻崇拝
    • 文書化する技術の存在
    • 法と人の一体性
    • 如来の全身はこの経に
    • 法華経を受持する人は如来使
    • 衣・座・室の三軌
  • 第一一章前半 見宝塔品(第十一) 241
    • 宝塔の出現
    • ストゥーパと法華経
    • 多宝如来はミイラか?
    • 六難九易
  • 第一一章後半 提婆達多品(第十二) 251
    • デーヴァダッタへの授記
    • デーヴァダッタは極悪人か
    • デーヴァダッタの名誉回復
    • 極端な布施
    • 二十中劫の寿命
    • 変成男子
    • 龍(ナーガ)とは
    • 輪廻と性別
    • 極楽往生と性別
    • 輪廻の内実とは
    • 変成男子・再論
  • 第一二章 勧持品(第十三) 268
    • 女性への授記
    • 迫害を忍ぶ
  • 第一三章 安楽行品(第十四) 272
    • 権力者に近づくな
    • カースト間交際に関する規定
    • 分け隔てなく教えを説け
    • 法華経の論理と一貫せず
    • 安楽行品への違和感
    • 世間体を気にする教団
    • 在家者の振る舞い
    • 「四つの在り方」の残り三つ
    • 旃陀羅が子、日蓮
    • 批判的に読むべし
    • 髻中明珠の譬え
  • 第一四章 従地涌出品(第十五) 284
    • 滅後に法を弘めるのは誰か
    • 地涌の菩薩
    • なぜ、大勢なのか
    • 四人の菩薩
    • 大菩薩の疑問
    • 時間のパラドックス
    • ひと目で菩薩とわかるのか
    • 弥勒菩薩はどこに?
    • 弥勒菩薩は外来神?
  • 第一五章 如来寿量品(第十六) 299
    • 三度懇請してやまず
    • 遥かな過去の覚り
    • 永遠の菩薩道
    • 燃燈仏と釈迦仏への統一
    • 三阿僧祇劫と二種の塵点劫
    • 久遠のブッダも寿命があるか?
    • 父と子のようなものか
    • ブッダの身体
    • 久遠のブッダは、釈迦仏か
    • キリスト仮幻説とは逆?
    • 釈尊の本体とは?
    • 毘盧遮那仏との違い
    • 法身とは
    • 法華経でブッダに出会う
    • 久遠実成仏と法華経
    • 菩薩行の逆転
  • 第一六章 分別功徳品(第十七) 330
    • 如来の寿命の長さの功徳
    • デイゴの花
    • 智慧波羅蜜
    • 釈迦仏の寿命
    • ゆるぎなく信じる
    • 声聞への供養も必要ない?
    • 法華経のPRが大事
    • 自利と利他
    • 経典の書写
    • 誰もが法華経を読めたのか
    • サンスクリット以外の言語
    • バラモン教復興と法華経
    • ストゥーパと精舎
    • 如来だと思いなさい
  • 第一七章 随喜功徳品 351
    • 五〇番目に聞いて喜ぶ福徳
    • 阿羅漢に導く福徳
    • 教えの伝言ゲーム
    • 文字と口伝え
    • 人間対人間の対話
    • 座席を譲り与える福徳
    • 肉体的欠点のクリア
  • 第一八章 法師功徳品(第十九) 363
    • 六根清浄
    • 清浄か正常か
    • 善悪を超える
    • 日蓮の言葉
    • 鋭敏な五感
    • 意根のはたらき
    • 百蓮華のシンボリズム
    • においにこだわる
  • 第一九章 常不軽菩薩品 379
    • 勢至菩薩の登場
    • 勢至菩薩は聞き役
    • 不軽菩薩の登場
    • 教えが衰亡する時代
    • 「軽んじない」か、「軽んじられる」か
    • 威音王仏の教え
    • 不軽菩薩のパフォーマンス
    • 仏か、菩薩か
    • 釈尊の神格化
    • 釈迦仏の菩薩行
    • それは、授記なのか
    • 地上に理想世界を
    • 法華経に先立つ確信
    • ケルン・南条本の書き換え
    • 全ての人を尊重する
    • 低いカースト
    • 平凡の中の非凡
    • 過去世の釈尊
    • 男女平等の思想
    • 入れ子構造
    • 題目と実践
  • 第二〇章 如来神力品(第二十一) 410
    • 別付嘱
    • 広長舌相
    • ”どこでも聖地”
    • 法が貴く、人が貴い
    • 聖地はあっていいのか
    • 日々の生き方に活かす
  • 第二一章 陀羅尼品(第二十六) 420
    • 陀羅尼品以下は後世の付加
    • 誰がいつ付加した?
    • なぜ付け加えたのか
    • 日蓮の法華経理解
    • 観音信仰
    • 陀羅尼が入り込む
    • 鬼子母神の母性
  • 第二二章 薬王菩薩本地品(第二十三) 430
    • 焼身自殺は布施か
    • 極楽に女性はいない
  • 第二三章 妙音菩薩品(第二十四) 434
    • ブッダの巨大化
    • 妙音菩薩の変身
  • 第二四章 観世音菩薩普門品(第二十五) 438
    • あらゆる方向に顔を向ける
    • 観音菩薩の神変
    • 男女生み分けと祖先崇拝
    • 男女平等のゆくえ
  • 第二五章 妙荘厳王本事品(第二十七) 446
    • 二人の王子による神変
    • 妙荘厳王の出家と授記
    • バラモン教と仏教
    • 善知識の重要性
  • 第二六章 普賢菩薩勧発品(第二十八) 451
    • 普賢菩薩は法華経の守護者
    • 法華経と無関係に作られた観音品
    • スリ替えの論理
    • 庇を貸して、母屋を取られる
    • 観音信仰はどこから
  • 第二十七章 嘱累品(第二十二) 458
    • 迹化と本化
    • そのほかの菩薩たち
    • 善男子・善女人
    • 何を付嘱したのか
    • 法華経を弘める菩薩たち
  • 終わりに 465
    • インド、中国で注目の観音
    • 不軽菩薩に注目した日蓮
    • 法華経の思想のとらえ方
    • 法華経の骨肉化
    • なぜそのような表現を?
    • 法華経は古びない
  • あとがき 植木雅俊 475
  • 参考文献 477
橋爪大三郎 植木雅俊『ほんとうの法華経』筑摩新書

2014-08-09

[][][]大いなる章を読む(その33) 22:56 はてなブックマーク - 大いなる章を読む(その33) - 蜀犬 日に吠ゆ

第三 大いなる章

六、サビヤ

 そこで、遍歴の行者サビヤは尊き師(ブッダ)の両足に頭をつけて礼して、言った、――「すばらしいことです。尊いお方さま。すばらしいことです、譬えれば倒れた者を起すように、覆われたものを開くように、方角に迷った者に道を示すように、あうりは『眼ある人々は色やかたちを見るであろう』といって暗闇の中で灯火をかかげるように、ゴータマさまは種々のしかたで理法を明らかにされました。ここでわたくしはゴータマ(ブッダ)さまに帰依したてまつる。また真理と修行僧のつどいとに帰依したてまつる。わたくしは師のもとで出家したいのです。完全な戒律を受けたいのです。

中村元『ブッダのことば』岩波文庫
ブッダのことば―スッタニパータ (岩波文庫)

ブッダのことば―スッタニパータ (岩波文庫)

2014-07-27

[][][]大いなる章を読む(その32) 19:54 はてなブックマーク - 大いなる章を読む(その32) - 蜀犬 日に吠ゆ

第三 大いなる章

六、サビヤ

 そこで、遍歴行者サビヤは師の所説をよろこび随喜し、こころ喜び、楽しく、嬉しく、欣快の心を生じて、座から起ち上がって、上衣(うわぎ)を一方の肩にかけ(右肩をあらわし)、師に向って合掌して、ふさわしい詩を以て目のあたり師を讃嘆した。

五三八 「智慧豊かな方よ。諸々の(道の人)の論争にとらわれた、名称と文字と表象とにもとづいて起った六十三種の異説を伏して、激流をわたりたもうた。

五三九 あなたは苦しみを滅ぼし、彼岸に達せられた方です。あなたは真の人(拝まれる人)です。あなたは完全にさとりを開かれた方です。あなたは煩悩の汚れを滅ぼされた方だと思います。あなたは光輝あり、理解あり、智慧豊かな方です。苦しみを滅ぼした方よ。あなたはわたくしを救ってくださいました。

五四〇 あなたはわたくしに疑惑のあるのを知って、わたくしの疑いをはらしてくださいました。わたくしはあなたに敬礼します。聖者よ、聖者の道の奥をきわめた人よ。心に荒みなき、太陽の末裔よ。あなたはやさしい方です。

五四一 わたくしが昔いだいていた疑問を、あなたははっきりと解き明してくださいました。眼ある方よ。聖者よ。まことにあなたは(さとりを開いた人)です。あなたには、妨げの覆いがありません。

五四二 あなたの悩み悶えは、すべて破られ断たれています。あなたは清涼(しょうりょう)となり、身を制し、堅固で、誠実に行動する方です。

五四三 象の中の象王であり偉大な英雄であるあなたが説くときには、すべての神々は、ナーラダ、パッバタの両(神群)とともに随喜します。

五四四 貴い方よ。あなたに敬礼します。最上の人よ。あなたに敬礼します。神々を含めた全世界のうちで、あんたに比べられる人はおりません。

五四五 あなたは覚った人です。あなたは師です。あなたは悪魔の征服者です。賢者です。あなたは煩悩の潜在的な可能力を断って、みずから(彼岸に)渡りおわり、またこの人々を渡すのです。

五四六 あなたは生存の素因を超越し、諸々の煩悩の汚れを滅ぼしておられます。あなたは獅子です。何ものにもとらわれず、恐れおののきを捨てておられます。

五四七 麗しい白蓮華が泥水に染らないように、あなたは善悪の両者に汚されません。雄々しき人よ、両足をお伸ばしください。サビヤは師を礼拝します。」

中村元『ブッダのことば』岩波文庫

第三 大いなる章

六、サビヤ

六十三種の異説――梵網経(Dn.Ⅰ, p.13ff.)に説かれた六十二の異端説に、自己の身体が実在すると見なす見解(身見 sakkayaditthi)を加えて六十三とする(Pj.)。異説を説明していう、――osaranani ti ogahanani titthani, ditthiyo ti attho(Pj. p.434).

中村元『ブッダのことば』岩波文庫

第三 大いなる章

六、サビヤ

両(神群)――Narada-Pabbata ti te kira dve devagana pannavanto(Pj. p.435).

ブッダのことば―スッタニパータ (岩波文庫)

ブッダのことば―スッタニパータ (岩波文庫)

2014-07-26

[][][]大いなる章を読む(その31) 19:54 はてなブックマーク - 大いなる章を読む(その31) - 蜀犬 日に吠ゆ

第三 大いなる章

六、サビヤ

 そこで、遍歴行者サビヤは師の所説をよろこび随喜し、こころ喜び、楽しく、嬉しく、欣快の心を生じて、さらに尊師に質問を発した。

五三三 サビヤがいった、「何を得た人を(学識ある人)と呼ぶのですか? 何によって(すぐれた人)となるのですか? またいかにして(おこないの具(そな)わった人となるのですか? (遍歴行者)とはそもそも何ですか? 先生! おたずねしますが、わたくしに説明してください。」

五三四 師は答えた、「サビヤよ、教えを聞きおわって、世間における欠点あり或いは欠点のないありとあらゆることがらを熟知して、あらゆることがらについて征服者・疑惑のない者、解脱した者、煩悩に悩まされない者を(学識のある人)と呼ぶ。

五三五 諸々の汚れと執著のよりどころとを断ち、智に達した人は、母胎に赴くことがない。三種の想いと汚泥とを除き断って、妄想分別に赴かない、――かれを(すぐれた人)と呼ぶ。

五三六 この世において諸々の実践を実行し、有能であって、常に理法を知り、いかなることがらにも執着せず、解脱していて、害しようとする心の存在しない人、――かれは(行いの具わった人である。

五三七 上にも下にも横にも中央にも、およそ苦しみの報いを受ける行為を回避して、よく知りつくして行い、偽りと慢心と貪欲(とんよく)と怒りと(名称と形態)(個体のもと)とを滅ぼしつくし、得べきものを得た人、――かれを(遍歴の行者)と呼ぶ。」

中村元『ブッダのことば』岩波文庫

ブッダのことば―スッタニパータ (岩波文庫)

ブッダのことば―スッタニパータ (岩波文庫)

2014-07-25

[][][]大いなる章を読む(その30) 19:44 はてなブックマーク - 大いなる章を読む(その30) - 蜀犬 日に吠ゆ

第三 大いなる章

六、サビヤ

 そこで、遍歴の修行者サビヤは師の所説をよろこび随喜し、こころ喜び、楽しく、嬉しく、欣快の心を生じて、さらに師に質問を発した。

五二八 サビヤがいった、「何を得た人を(ヴェーダの達人)と呼ぶのですか? 何によって(知りつくした人)となるのですか? いかにして(務め励む者)となるのですか? (育ちのよい人)とはそもそも何ですか? 先生! おたずねしますが、どうかわたくしに説明してください。」

五二九 師は答えた、「サビヤよ、道の人ならびにバラモンどもの有するすべてのヴェーダを弁別して、一切の感受したものに対する貪りを離れ、一切の感受を超えている人、――かれは(ヴェーダの達人)である。

五三〇 内的には差別的(妄想とそれにもとづく名称と形態)とを究め知って、また外的には病いの根源を究め知って、一切の病いの根源である束縛から脱(のが)れている人、――そのような人が、まさにその故に(知りつくした人)と呼ばれるのである。

五三一 この世で一切の罪悪を離れ、地獄の責め苦を超えて務め励む者、精励する賢者、――そのような人が(務め励む者)と呼ばれるのである。

五三二 内面的にも外面的にも執著の根源である諸々の束縛を断ち切り、一切の執著の根源である束縛から脱れている人、――そのような人が、まさにその故に(育ちのよい人)と呼ばれるのである。」

中村元『ブッダのことば』岩波文庫

ブッダのことば―スッタニパータ (岩波文庫)

ブッダのことば―スッタニパータ (岩波文庫)