蜀犬 日に吠ゆ

2010-06-09

[][][]葛覃(葛延びて)『周南』を読む(その4) 21:42 はてなブックマーク - 葛覃(葛延びて)『周南』を読む(その4) - 蜀犬 日に吠ゆ

 周南、第四歌。

4 樛木(しだり木)

1

南有樛木

葛藟纍之 liuei

樂只君子

福履綏之 siuei


南に樛木(きうぼく)あり

葛藟(かつるゐ)これを纍(まと)う

樂しき君子

福履(ふくり)これを綏(やす)んず


みんなみの しだり木に

つたかづら まとひたり

めでたしや よき人に

しあはせの やすらはむ


2

南有樛木

葛藟荒之 xuang

樂只君子

福履將之 tziang


南に樛木あり

葛藟これを荒(おほ)ふ

樂しき君子

福履これを將く


みんなみの しだり木に

つたかづら おほひたり

めでたしや よき人に

しあはせは いやまさむ


3

南有樛木

葛藟縈之 iueng

樂只君子

福履成之 zjieng


南に樛木あり

葛藟これを縈(めぐ)る

樂しき君子

福履これを成す


みんなみの しだり木に

つたかづら めぐりたり

めでたしや よき人に

しあはせは いやはてに

白川静『詩経国風』東洋文庫

主題 祝頌の歌。木の茂るさまを歌うのは祝頌の興であるが、特に寄生木(やどりぎ)や、また蔦葛の類がまとう姿は吉祥として喜ばれた。わが國にも、「あしひきの山の木末(こぬれ)の寄生(はよ)取りて插頭(かざ)しつらくは千年(ちとせ)壽(ほ)くとぞ」(萬葉、四一三六、大伴家持)のような歌があり、この詩も宴飲の際の祝頌の歌である。

白川静『詩経国風』東洋文庫

 「枯れ木も山の賑わい」といいますが、宿り木はおめでたいんですね。そういう感覚はあんまりないです。むしろ寄生された方の木が傷むのではないかと心配になってしまいますからね。

2010-06-01

[][][]葛覃(葛延びて)『周南』を読む(その3) 20:32 はてなブックマーク - 葛覃(葛延びて)『周南』を読む(その3) - 蜀犬 日に吠ゆ

 周南、第三歌。

卷耳(みみ菜草)

1

采采卷耳

不盈頃筐 khiuang

嗟我懐人

寘彼周行 heang


卷耳を采り采るも

頃筐に盈(み)たず

嗟(ああ) 我人を懐(おも)うて

彼の周行に寘(お)く


みみ菜草 摘み摘むも

かたまにも盈たずけり

かのひとを 思ひなづみて

道の邊に そをおきにけり


2

陟彼崔嵬 nguei

我馬虺隤 duei

我姑酌彼金罍 luei

維以永懐 hoei


彼の崔嵬に陟(のぼ)れば

我が馬 虺隤(くわいたい)たり

我姑(しばら)く彼の金罍(らい)に酌みて

ここを以て永く懐はざらん


岩山に のぼらへば

わが馬は 色あせぬ

いささかに 酒酌みて

いとしばし 思ひ忘れむ


3

陟彼高岡 kang

我馬玄黄 huang

我姑酌彼兕觥 koang

維以不永傷 sjiang


彼の高岡に陟れば

我が馬 玄黄たり

我姑く彼の兕觥(じくわう)に酌みて

ここを以て永く傷まざらん


高山に のぼらへば

わが馬は 色失せぬ

いささかに 酒酌みて

いとしばし やすらはむ


4

陟彼砠矣 tsia

我馬瘏矣 da

我僕痡矣 phiua

云何吁矣 xiua


彼の砠(やまそば)に陟れば

我が馬瘏(や)みぬ

我が僕痡(や)みぬ

ああ何ぞ吁(うれ)はしき


岩山に のぼりたり

わが馬は なやみたり

わたしもべ たゆたひぬ

なぞかくも うれはしき

白川静『詩経国風』東洋文庫

 坊ちゃんの失恋旅行につき合わされる馬と僕が可哀想。とか思ったら、恋愛成就の願掛けが主題である由。

主題

 登高望郷の歌。1の草摘みは、魂振りの民俗を歌う。魂振りとしての草摘みの歌は、日を限り、場所を定め、神と約束をして、そのかねごとを成就したときに、願い事は成就されるとした。

白川静『詩経国風』東洋文庫

 白川先生の説明にもありますが、これは日本にもあった習俗であるそうです。たとえば百人一首の「君がため春の野に出でて若菜摘む わが衣手に雪はふりつつ」とか(白川先生の引用は万葉集ですけど)。

 で、2以下は登高望郷であるそうで、別に失恋とかそういうわけではないようです。1での思い人がすなわち妻であり、山から見わたして、故郷の家を思うと。

詩経国風 (東洋文庫)

詩経国風 (東洋文庫)

2010-05-29

[][][]葛覃(葛延びて)『周南』を読む(その2) 21:35 はてなブックマーク - 葛覃(葛延びて)『周南』を読む(その2) - 蜀犬 日に吠ゆ

 周南、第二歌。

葛覃(葛延びて)

1

葛之覃兮

施于中谷 kok

維葉萋萋 tayei

黄鳥于飛 piuei

集于灌木 mok

其鳴喈喈 kei


葛の覃(の)びて

中谷に施(うつ)る

維(これ)葉萋々(せいせい)たり

黄鳥于(ここ)に飛び

灌木に集り

その鳴くこと喈々たり


葛延びて

谷に及べり

青き葉内に

鶯飛び

木むらに集ひ

鳴き交はすなり


2

葛之覃兮

施于中谷 kok

維葉莫莫 mak

是刈是濩 huak

為絺為綌 khyak

服是無斁 jyak


葛の覃びて

中谷に施る

維葉莫々たり

ここに刈り ここに濩(に)て

絺(ち)と為し綌(げき)と為し

これを服して斁(いと)ふなし


葛延びて

谷に及べり

茂る葉蔭

刈りて蒸しこめ

細き布太き布とり

あかずまとへり


3

言告師氏

言告言歸 kiuei

薄汙我私

薄澣我衣 iei

害澣害否 piue

歸寧父母 me


ここに師氏に告げ

ここに告げここに歸る

薄(いささ)か我が私を汙(あら)ひ

薄か我が衣を澣(あら)ふ

害(いづ)れをか澣ひ害れをか否(しか)せざらん

父母に歸寧せん


師の君に告げ

里歸りせむ

はだ着も洗ひたり

衣もそそぎたり

すべて洗い清め

たらちねのもとにゆかむ

白川静『詩経国風』東洋文庫

 第一歌では嫁を取り、第二歌では、その嫁が里帰り。

 家庭内の役割分担で言えば、「翁は山で芝を刈り、媼は川で衣すすぎ」というところでしょうが、歸寧(里帰り)のための服を用意し、清めるということを表すのでしょう。その服を来て帰るのか、それとも持参して里親に渡すのかは謎。

詩経国風 (東洋文庫)

詩経国風 (東洋文庫)

2010-05-23

[][][]關雎 14:48 はてなブックマーク - 關雎 - 蜀犬 日に吠ゆ

 「周南を読まないと頭がつかえたままじゃよ」と孔夫子が言うので読みます。

關雎(みやこどり)

1

關關雎鳩 kiu

在河之洲 tjiu

窈窕淑女

君子好逑 giu


關々(くわんくわん)たる雎鳩(しょきう)は

河(かは)の洲に在り

窈窕(えうてう)たる淑女は

君子の好逑(かうきう)


かうかうと みやこどり

かはのなかすに

たをやかの かのひとは

よきひとのつま


2

參差荇菜

左右流之 liu

窈窕淑女

寤寐求之 giu


參差(しんし)たる荇菜(かうさい)は

左右にこれを流(と)る

窈窕たる淑女は

寤寐(ごび)にこれを求む


おひいづる じゆんさいを

みぎひだり かきてとる

たをやかの かのひとは

よすがらに もとめつつ


3

求之不得 tek

寤寐思服 biuek

悠哉悠哉

輾轉反側 tzhiek


これを求めてこれを得ざれば

寤寐に思服す

悠なるかな悠なるかな

輾轉反側す


もとめつつ あひえねば

よすがらに ものおもふ

おもひつつ わびしくて

いねがてに ふしまろぶ


4

參差荇菜

左右采之 tse

窈窕淑女

琴瑟友之 hiue


參差たる荇菜は

左右にこれを采る

窈窕たる淑女は

琴瑟これを友(した)しむ


おひいづる じゆんさいを

みぎひだり つみてとる

たをやかの かのひとは

ことかなで したしまむ


5

參差荇菜

左右芼之 mo

窈窕淑女

鐘鼓樂之 lok


參差たる荇菜は

左右にこれを芼(えら)ぶ

窈窕たる淑女は

鐘鼓これを樂しむ


おひいづる じゆんさいを

みぎひだり えらびとる

たをやかの かのひとは

かねうちて たのしまむ

白川静『詩経国風』東洋文庫
詩経国風 (東洋文庫)

詩経国風 (東洋文庫)