蜀犬 日に吠ゆ

2009-01-12

[]降臨賞に投稿しました 23:53 はてなブックマーク - 降臨賞に投稿しました - 蜀犬 日に吠ゆ

 xxさんに読んでもらえて光栄です。


[][][]空から女の子がオチ 17:27 はてなブックマーク - 空から女の子がオチ - 蜀犬 日に吠ゆ

 桶屋が死んで取り残された母娘。世話する人があるというので、江戸から下って赤羽へ。

 子供連れでは足も進まず、予定を越えて夜になってしまいました。

 やむを得ず、おいなりさんのお堂を借りて夜露をしのんでおりました。


 草木も眠る丑三つ時。ふいに表に人の声。

 素性も知れぬ荒くれどもが、どうやらお堂に来たらしい。

 娘を起こして逃げる算段、ところが賊は戸を開ける。

 かのとき早く二人は梁へと必死にのぼる。


 げに恐ろしき山賊は、今日も今日とて盗みの準備。

 梁の上では、生きた心地もありません。

 次第に疲れて辛抱たまらず、娘のからだがぐらりとかぶく。

 母はあわてて帯を解き、落ちる娘にゆわえつけ、ぎゃくにはずみで自分が落ちる。

 母の重きに絶えかねて、娘の体は……屋根を貫き天を舞う。


 山賊たちはこれを見て、「たがやぁ~~~」


[][][]鉄の勇気を受けついで 16:15 はてなブックマーク - 鉄の勇気を受けついで - 蜀犬 日に吠ゆ

ギリシア神話 (岩波文庫)

ギリシア神話 (岩波文庫)

 ミーノースはテーセウスとその仲間の逃亡を知って、ダイダロスに罪ありとし、彼とミーノースの女奴隷ナウラクテーとの間に生れた子イーカロスを迷宮内に幽閉した。彼は自分と子供のために翼を作り上げ、(アポロドーロス 高津春繁訳『ギリシア神話』岩波文庫

「イーカロス、翼をきちんとつけたか?」

「はい、ダイダロスお父さん。」

「翼で飛ぶときに、約束を守れるか?」

「はい、ダイダロスお父さん。イーカロスは翼が太陽のためにその膠が溶けて放れないように高みを、また翼が湿気のために放れないよう、海の近くを飛ばぬようにします。」

 生まれたときから迷宮にあり、母親どころか父以外の人間を見たことのないわが子を、ダイダロスは憐れんだ。

「迷宮を抜ければ、世界がある。太陽があり、海がある。おまえはきちんと父の後を飛ぶのだ、イーカロス。」

「はい、ダイダロスお父さん。」

「イーカロス、外へゆけばたくさんの男や女や男女や、牡牛や牝牛や魚や鳥を見ることができる。そうして私たちは仕事を見つけて、生きてゆくのだよ。」

「はい、ダイダロスお父さん。」

「イーカロス、イーカロス、イーカロス」

「外の世界にはたくさんの誘惑がある(太陽や海もそうだが)。イーカロス、私たちは強く生きなければならないのだよ。イーカロス、この暗い迷宮の中で強く生きてゆくために、私はおまえに強い名前を与えた。」

「ダイダロスお父さん、イーカロスの名は私を強くしてくれました。」

「外の世界に出たら、おまえはおまえ自身の名前で生きてゆくのだ。」

 ダイダロスは、ほっと息をついでから告げました。


「おまえは、女の子なのだよ、イーカロセー」


[][][]魔女が空から降ってきた 15:39 はてなブックマーク - 魔女が空から降ってきた - 蜀犬 日に吠ゆ

 空から降ってきたんだと、思う。女の子は1階の屋根から僕の部屋をのぞき込んで、にっこり笑った。可愛い。6年生くらい?

 「誰?」

 質問には答えずに、女の子はベランダのガラス戸から入ってきた。

 ずいぶんと大きかった。僕の身長の何倍もある。

 「あんたは、庭。」気づけば僕は犬だった。


 もうひとり、かっこいい男が入ってきた。

 「人間界で修行だって?僕をおいていくなんてひどいじゃな~~い。」

 「なに、邪魔しに来たの?」

 「逆だよ、この大魔法使いロランドが手伝ってあげるのに」

 女の子はこれも無視して僕の左耳をむしり取った。絶叫してもがいても、彼女は顔色一つ変えなかった。

 「片方がピーンとしてて、もう片方が折れてるようにしたかったんだけど、失敗だわ。」

 窓から放り投げられた。背中を強くうった僕は庭に犬小屋があるのを見つけた。名前プレートまである。「チギレ」と書いてあった。

 台所からママの声がする。

「ナナちゃ~~ん、今へんな音がしなかったぁ?」「なんでもないわ、ママ。」


 見あげると、かっこいい男は、「わかったよ、じゃ、僕は隣の家に住むから」と、窓を飛びだしていった。


 女の子が殺伐としない状況にしてみました。すると周りが無残。これはたしか『西遊記』で、下生した天女に懸想していた神の一人が同じように天から落ちて妖怪となり、転生した天女をかどわかす話。

2009-01-10

[][][]名門!儒林館高校スカイダイビング部! 23:09 はてなブックマーク - 名門!儒林館高校スカイダイビング部! - 蜀犬 日に吠ゆ

断片


 絶対ココロの中だけで叫んだ。

「センパイ!センパイの胸に飛び込みたいんです!高度5000フィートから!」

 あたしは、天使じゃない。でも、天使になるのが夢だった。

 タンデムでしか飛べない初心者だから、絶対笑われるから、誰にもいわないけど、センパイの胸に飛び込むのは、あたし。あたしが最初。


 「そろそろ一年坊もパラシュートを用意しないとなあ。」小野センセイはいちいち嘘くさい台詞を吐く。「一年坊」って、バカか。でも、そんなバカは、嫌いじゃない。あたしのいうことを聞いてくれたら、(センパイとの)結婚式にはよんであげてもいいかも。


 今日も、女の子たちが空から降る。でも、天使なのはあたし。センパイの天使なのは。


(筆者より。記録によれば儒林館高校のスカイダイビング部は「初歩的な事故」で活動を自粛することになる。それが、この手記の女の子やその先輩、あるいは関わりのある人物であるかどうかはつまびらかではない。読者のみなさんで考えていただいてもよかろうと思う。それではこれにて? グート・バイ)


[][][]その後の、もしくはその前の話 23:09 はてなブックマーク - その後の、もしくはその前の話 - 蜀犬 日に吠ゆ

その後の、もしくはその前の話

 いつもの悪夢に落ちてゆく感覚を味わいながら、それを止めることができない。いつもとなんの変わりもない。

 少年のころにもどっている。山の上の小さなほこらで泣いている。一緒にいたはずの兄はいない。ほこらの下の深い穴に落ちてしまったのだ。そのことで泣いているわけではない。自分が明後日の夕方に村の人たちの捜索隊に見つけてもらうまで山の上にいなければならない、そのことで泣いているわけではない。兄弟から目を離したことで折檻を受けたねえやが里へ帰されてしまった、そのことで泣いているわけではない。兄が消えたことで母親は正気を失い、来週には生まれたばかりの妹を釜で煮殺してしまう。そのことで泣いているわけではない。


 深い穴は、待っている。それが恐ろしくて泣いている。


 意識はだんだんと眠りと距離をおき、ホテルの一室にまで戻ってきた。日付のかわるまえでちょうどいい。今から出かければ、誰にも会わずにあの山の上にまで行けるはず。体を起こし、準備をする。毛布でくるんだ、かつて女の子だったものを積みこんだ車を飛ばした。

 あのあと、穴に許してもらうために多くの石や木の枝や、蛙や魚、それからどんなものか分からないがたくさんのものを放り込んだ。小学校を卒業すると教科書もランドセルも。とにかくなにかあればそれは穴に放り込んだ。

 それから、穴に呼ばれることはずっとなかった。はずなのに。


 村を出て、穴のことなど忘れたころ、それは夢に出てくるようになった。また、求めているのだ。何を? 何を求めているのだろう。


 思ったよりも山道に手間取ってしまった。あの頃と変わっていないほこらと、深い穴。ずるずると穴の縁にそれを運ぶと、昔となんにも変わらない、穴は底なしのやみへ呑みこんだ。


 しばらくたって、ほこらが火災になりあの穴はどこかの業者が埋め立てることになったと聞いた。


 小石が落ちて、「おーい、でてこーい」と空から声がした。